東京と金沢からの登壇者が、牧師、信者の親、左派弁護士らがいかに連携してきたか、また解散命令後の信者たちがどのような状況に置かれているかを報告した。
マッシモ・イントロヴィニエ
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国際会議には、議論の全体像を理解するための「地図」が必要になるセッションがある。しかし、10月12日に台湾で開催されたCESNUR 2026国際会議のプレナリー・セッション「日本における統一教会問題」では、地図よりも、複雑な関係をひも解くための「系譜図」が必要だった。登壇者たちは、誰が統一教会潰しを展開してきたのか、その動きを正当化するナラティブがいかにして日本社会に広まったのか、そして裁判所による宗教法人の解散命令を受け、一般信者たちが現在どのような状況に置かれているのかを明らかにした。私はこのセッションの議長を務め、3人の登壇者を紹介した。
最初に登壇したのは、UPF-Japan事務総長の魚谷俊輔氏である。魚谷氏は、統 一教会に対する反対運動がどのように形成されてきたのか、その歴史的経緯を説明した。魚谷氏によれば、統一教会反対運動は、3本の支流が合流して一つの大きな川となる過程に例えられる。それぞれの勢力は長年にわたり別々に展開されていたが、1980年代初頭に合流し、「統一教会潰し」という共通の目的に向かうようになったという。第一の流れは、キリスト教の牧師たちによる反対運動である。荻窪栄光教会の森山諭(もりやま・さとし)牧師は、1966年、日本で確認されている最初の「ディプログラミング」を実行した。ディプログラミングとは、信者を拉致監禁し、信仰を放棄するまで拘束する行為を表現した言葉である。1976年には、森山牧師がセミナーで信者を物理的に隔離する手法を指導し、その後、同様の事例が急増した。普段は意見が一致することの少ない福音派と、比較的リベラルな立場の牧師たちも、統一教会への反対という点では共通の立場を取った。1980年代には、日本基督教団の内部で左派活動家の影響力が強まり、同教団は1988年に統一教会に反対する声明を発表した。
第二の流れは、信者の親たちによる反対運動である。「反対父母の会」は、1967年のメディア報道などをきっかけに形成されていった。同会のメンバーは、自分たちの成人した子供がだまされ、あるいは「洗脳」されたと考え、監禁や専門のディプログラマーによる介入を伴う「救出」活動を支持した。第三の流れは、政治的な反対運動である。共産主義や社会主義を掲げる活動家たちは、統一教会が国際勝共連合を通じて展開していた反共産主義運動に反発していた。国際勝共連合は当時、日本にスパイ防止法の制定を求める運動を推進していた。こうした中、1987年には左派系の弁護士たちが「全国霊感商法対策弁護士連絡会」を結成した。同弁連は、いわゆる「霊感商法」をスパイ防止法制定運動の資金源と位置づけ、この問題を統一教会とその反共産主義活動を攻撃するための手段として利用した。
三つの流れは、やがて互いに連携するようになった。その役割分担は、企業も顔負けの巧妙なものだった。親たちは牧師に報酬を支払い、脱会させられた信者たちは左派系の弁護士へと誘導された。弁護士たちが起こした訴訟によって教会の社会的評価が損なわれると、マスコミがそれを大きく宣伝し、影響をさらに拡大させた。魚谷氏は、2022年7月の安倍晋三元首相暗殺事件が、状況を決定的に変える転機となったと指摘した。事件の容疑者は、母親が統一教会に多額の献金をしたことへの恨みを犯行の動機として挙げていた。魚谷氏によれば、教団の解散を正当化するには法的根拠だけでは不十分であり、解散に至る過程では政治的要因が大きく作用したという。

続いて登壇したのは、金沢大学教授の仲正昌樹氏である。仲正氏自身は、1980年代初頭から1992年まで統一教会に所属していた元信者である。仲正氏は、日本社会で統一教会をめぐって形成されてきた物語に焦点を当てた。その分析の基礎となったのは、哲学者アラスデア・マッキンタイアの「ナラティブ(物語)」理論である。マッキンタイアは、人間は出来事や行為を一つの物語の中に位置づけることで、その意味を理解すると論じている。仲正氏によれば、人々はなじみのない現象に直面すると、陰謀論に似た物語を作り上げやすい。そして統一教会は、日本社会において、そうした物語を生み出す格好の題材となってきた。冷戦期には、統一教会の反共運動を理由に、批判者たちは同教会を「宗教を隠れみのにした政治団体」とみなした。その後、「洗脳」や「マインド・コントロール」という批判が広まり、さらに1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件以降は、オウム真理教に対する否定的なイメージが、不当に統一教会にも重ねられるようになった。
安倍元首相の暗殺事件以降は、いわゆる宗教2世の搾取や、政治家と「カルト」の癒着を中心とする新たな物語が形成され、統一教会はその「ラスボス」として描かれるようになった。ゲームの世界で「ラスボス」とは、最後に登場する最も強力な敵のことである。その敵を倒せばゲームは終了し、それまでの出来事の意味もすべて明らかになるという存在だ。仲正氏は、日本のメディアが統一教会を、あらゆる悪の根源であるかのような「ラスボス」に仕立て上げてきたと指摘した。そして、こうした単純化された物語が広まることで、問題を多角的に捉える視点が失われ、社会における議論の幅も狭められてきたと論じた。

続いて、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の日本会長、堀正一氏が登壇し、解散命令後の信者たちが置かれている状況について報告した。堀氏は、安倍元首相の暗殺事件をきっかけに解散への動きが加速し、弁護士やメディアがその流れをさらに強めたと指摘した。解散命令については、宗教法人としての税制上の優遇措置が失われるだけで、信教の自由には影響しないとの主張もあった。しかし、堀氏が示した実態は、それにとどまるものではなかった。清算手続きに伴い、信者たちの教会施設への立ち入りが制限され、施設の売却や賃貸契約の解除も進められている。その結果、信者たちが集まって礼拝を行うことも困難になっている。新宿教会では葬儀の実施が制限され、福井県では信者が寄進した教会施設が使用できなくなるなど、具体的な影響が生じている。
家庭連合が7月中旬から10月初旬にかけて実施した調査には、13,213件の回答が寄せられ、そのうち84.7%が精神的な苦痛を経験したと答えた。また、数千人が身体的な健康への影響や、精神科を含む医療機関への受診を報告した。2,000人以上が家族からの批判や暴力を経験したほか、職場や学校で困難に直面しているという声も数多く寄せられた。こうした数字の背後には、信者一人ひとりの深刻な体験がある。兄に階段から突き落とされた女性や、信仰を捨て るよう刃物で脅された高齢の信者の事例も報告されている。さらに堀氏は、一部の医療機関やカウンセリングの現場では、信仰を持ち続けること自体が治療すべき問題として扱われていると指摘した。

堀氏は、解散命令の影響が礼拝にとどまらず、家庭生活や住居、雇用、健康にまで及んでいると指摘した。そして、宗教法人格を失っても信教の自由は損なわれないという考え方は、現実からかけ離れていると批判した。さらに、解散命令が事実上、信者に対する差別を容認する「免罪符」となっており、当局はこうした実態を見過ごしていると訴えた。日本政府関係者は、解散によって失われるのは税制上の優遇措置だけだと説明してきた。しかし、堀氏が集めた報告は、解散命令がもたらす代償がそれをはるかに超えるものであることを示している。そして、その重い代償を払わされているのは、ほかならぬ信者たちなのである。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of Pennsylvania Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


