神谷弁護士と山口弁護士は、宗教的不寛容と差別の宣言文を法廷に持ち込んだ。
マッシモ・イントロヴィニエ
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安倍晋三元首相を暗殺した山上徹也被告の公判において、いまや法廷はイデオロギーの舞台と化している。その中心に立つのが、「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)の中心人物である神谷慎一と山口広である。彼らの証言は法律用語をまとっているものの、実際には統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を解散させ、信者とその子供たちにレッテルを貼るための数十年にわたるキャンペーンの継続である。
神谷と山口の法廷での発言は、中立的な専門家の意見などではない。全国弁連が発信してきた「統一教会は宗教ではなく“カルト”」という固定観念を、そのまま法廷に持ち込んだ政治的主張である。彼らのつくる枠組みは単なる偏ったレッテル貼りではない。信教の自由を奪い、強制的な介入を正当化するための戦略的な枠組みである。神谷が語った「母親をどうしたら脱会させられるかが大事」という発言は、ひとりの女性の宗教的信念を、あたかも救済されるべき「病気」であるかのように扱っている。彼女の主体性は切り捨てられ、尊重されるべき人格は、あたかも「解決されるべき問題」となった。
こうしたレトリックは単なる理論ではない。全国弁連の一部弁護士は、信者を拉致監禁し棄教させるための「ディプログラミング」に関与していた記録がある。その様な歴史がある組織の代表として語る、神谷の「母親を脱会させる」という言葉は極めて不穏である。
神谷の「宗教虐待」の定義も同様に問題である。彼は、宗教虐待の定義を「子どもの考えや人格を無視して親の信仰を強制すること」と述べている。これは国際規範からの根本的な逸脱である。日本は、自由権規約(ICCPR)に署名および批准しており、同規約第18条には次のように明記されている。「この規約の締約国は父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する」。神谷弁護士がこの文言の理解に困難を抱えているのであれば付言しておく。ここで明記されている「自己の」とは、児童ではなく親の信念を指す。
文化を越えて、親には自己の信仰に基づき子どもを教育する権利がある。乳児に洗礼を受けさせること、乳児の「考えや個性」が別の宗教に傾いているか確認なしに教会に連れていくこと、または宗教的価値観を教えることは決して虐待ではない。それは家庭と文化の継承の表れである。神谷のつくる枠組みは、ごく一般的な宗教教育を病理化し、私的信仰の領域への国家介入を促すものである。
「強制」と「教育」の境界線はどこにあるのか。神谷の定義は、信仰生活の根幹そのものを犯罪化し、自由権規約とも整合しないものである。
山口広弁護士も証人尋問を受けたが、全国弁連の政治的起源については意図的に触れなかった。1987年に設立されたこの組織は、統一教会の反共主義的立場と、日本のスパイ防止法への支持に反発する動きから生まれた。山口自身もその創設に関わっていたにもかかわらず、法廷では全国弁連を純粋な人道的取り組みとして証言した。これは明らかな歴史修正主義である。
山口が提唱する教団の二世信者との「相談窓口」は、さらに深刻である。この問題は近年、マイノリティ宗教に属する児童を標的とした資料が、日本の学校現場で配布されたというキャンペーンと重なり合う。国連はこうした動きを繰り返し非難し、宗教的マイノリティの権利を侵害する危険性があるとして警告してきた。国連は次のように述べている。「こうした教材は、宗教や信仰のマイノリティに属する子どもたちを保護するどころか、いじめや疎外を助長する恐れがある」。
全国弁連の弁護士たちは、中立を守る弁護人などでは決してない。彼らは山上裁判を政治的・宗教的アジェンダのために利用するイデオローグである。彼らの証言は、暗殺の根源を理解しようとするものではなかった。統一教会を悪として描き、信者を被害者もしくは脅威として描くストーリーを補強するためのものにほかならない。これはもはや裁判ではない。家庭連合の法人解散を目指し、さらには二世信者までを標的とする、宗教抹殺キャンペーンである。
弁護士らはその過程で、国際法を無視し、個人の主体性を奪い、さらに権威主義的な手法にまで踏み込んでいる。法廷はいつしか「説教壇」へと変わり、公判はイデオロギーの純潔性という誤った概念を掲げて不寛容を促進する、説教壇と化してしまった。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


