BITTER WINTER

献金に問題? なら元首相を殺そう

by | Nov 28, 2025 | Documents and Translations, Japanese

安倍晋三元首相暗殺事件の裁判は反統一教会勢力によって不条理の劇場に変わってしまった。

パトリシア・デュバル

Read the original article in English.

Tetsuya Yamagami in court. AI-generated.
AI生成による法廷での山上徹也被告。

日本で続いている安倍晋三元首相の暗殺犯である山上徹也被告の公判は、多くの点で筆者を唖然とさせ、筆を取らずにはいられなかった。

メディアはこの事件を大げさなまでに過剰に報じ、殺人犯をまるで被害者であるかのように描いた。母親が20年以上前に旧統一教会に献金したことで幼少期に苦しんだことが暗殺の原因とされた。

彼が被害者であるとされたため、山上の家族全員が法廷に立った。もっとも、実際に証言したのは妹と母親だけ。兄はすでに自殺し、父親も30年ほど前に亡くなっている。

この家族の歩んできた道が不運な歴史だったことは確かであり、母親が教会に入会するよりずっと前からその悲劇は始まっていた。

夫の自殺と長男の障害という現実に直面したこの可哀そうな母親は、救いと希望を必死に求めていた。

その過程で彼女は旧統一教会の信徒と出会い、信仰へと導かれた。

容赦なく降り注ぐ家族の不幸に向き合うために、母親は救いを求め信仰に全身全霊を注いだ。

法廷での彼女自身の証言によれば、自らの意思で次々に献金を行うようになった。そして次第に、日々の生活の中で母親としての務めよりも、これが生き延びるための闘いであり最優先となっていったという。

その結果子どもたちは貧困と十分なケアを受けられない状況に苦しんだ。

やがて彼女は自己破産に追い込まれ、この事態を受けた教会は献金の半額を、毎月まとまった額で返金する措置を取った。

その返金のおかげで、妹はようやく大学に進学することができたが、もちろんそれまでの長い苦難の年月が消え去るわけではなかった。

そして今、自らの息子が殺人罪で訴追されるという悲惨な事態を前に、深い罪責感にかられているこの敬虔な母親は、息子をかばい、この悲劇的な事態の一切を自分の責任であると受け止め、法廷で証言した。

しかし、これが一体どうして元首相の殺害と結びつくというのか。

少なくとも言えるのは、この家族の破滅的状況に対して責任を追求したとしても、安倍氏は極めて遠いターゲットと言える。というより、安倍氏がその状況のために出来ることは無かった。

教団が取り組む平和活動の一部に、たまたま安倍氏が支持メッセージを寄せ、それを反教会勢力が政治家と教会の癒着だと非難した。

被告の弁護士たちは、予想どおり旧統一教会の排除を使命とする「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の弁護士2名を証人として呼び、教団にこの暗殺事件の全ての責任があると主張した。反カルト運動(鈴木エイト)に至っては、今回の暗殺は「腑に落ちる」とまで語っている。

彼らの不条理な「ロジック」によると――献金に問題があるなら、元首相を殺せばよい、ということである。

それで問題が解決するのだろうか。

これらの弁護士たちは、実際に法廷でもそう述べているが、犯行に及んだ青年は深い苦悩の中にあったため深く考える余裕もなく、教会を支持する人物のうち最も目立つ存在を標的にしたと主張している。

この驚くべき主張がどれほど説得力を持つのか、まだ判断できない。もし被害を訴える全員が、民事的手段でなく、責任を追及された政治家を殺すようになれば、その社会は石器時代に逆戻りしたと言えるだろう。

そんな極端な事態が起こり得るのは、長年にわたるメディア汚染とヘイトスピーチにより、教団が犯罪組織と描かれ、国際法でいう「ヘイトクライム」を助長してきたためである。

さらに、2009年の教団からの返金以降、安倍氏の暗殺に至るまでの間、唯一山上と継続的に関わりを持ってきたのは反カルト運動だった。彼らは、山上の中にあった怒りと憎悪の感情を煽り、ついには行動に出るところまで追い込んだのである。

しかし、たとえ誰かが憎悪を煽ったとしても――または彼自身が“操り人形”の役割を受け入れたとしても――最終的に自分の行動を選んだのは本人である以上、暗殺者はその責任を全面的に負わなければならない。


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