現在、韓国国会で審議中の法案は、民主主義諸国の中でも最も苛烈な内容であり、同国における宗教の自由の静かな終焉を意味する。
マッシモ・イントロヴィニエ
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現在、韓国国会では、あまりに広範で、憲法による保障を軽視する法改正案が審議されている。その内容をみると、立案者ははたして国民が序文以外も読むことを想定して書いたのか疑いたくなるほどである。この法案の公式説明によると、現行法では、主務官庁が非営利法人の設立許可を取り消せるのは、その法人が「目的以外の事業を行った場合」「設立許可の条件に違反した場合」「公益を害する行為を行った場合」と規定しているという。ところが、「憲法上、政教分離の原則に違反し、特定の政治勢力と結託するなどの反社会的行為が生じ ているにもかかわらず、これらを効果的に制裁するための法的手段が十分でない実情がある」と懸念を示している。さらに立案者たちは、次の様にも主張している。「行政当局が違法行為を認知したとしても、これを確認する調査権限が明確でないため、実効性のある監督が難しい構造的限界がある」と。そこで提案されている解決策が、「法人の設立許可取消事由を具体化し、主務官庁の調査権限を明文化して、反社会的法人の残余財産を国庫に帰属させる制度を強化することにより、法人格の濫用を防止し、憲法秩序を守護する」というものである。
これは立法文言の信じられない例である。善意を装った文言の背後に、宗教生活に対する前例のない国家介入の構想が潜んでいる。よりシンプルに言えば、この改正案は、教会を恣意的に解散させ、令状なしに調査を行い、その財産を没収することさえ可能にする手段となり得る。
第37条の改正は、法人に対する最初の警告といえる。この条文では、行政当局に対し、宗教法人へ財務および運営に関する記録の提出を、通知なしに求める権限を与える。これは、法人に対して恒常的なコンプライアンス負担を課すものである。要求に躊躇したり、疑問を呈したり、あるいは短期間で文書を提出できなかった教会は、非協力的、あるいは疑わしい存在と見なされる危険を負うことになる。
第38条の改正は、さらに踏み込んだ内容となっている。同条は、宗教団体が「宗教と国家の分離に違反した」と見なされた場合や、「公益を害した」と判断された場合などに、設立許可の取消しを可能にするものである。これらの概念はあまりにも広範で、ほぼあらゆる政治的表現に適用させることができてしまう。政府の政策を批判する牧師、開発計画に反対する仏教団体、人権問題について発言するカトリック司教――いずれも政治への関与あるいは公益侵害として非難され得る。さらに改正案は、「法人の代表者、理事、または代理人」が、「法人の業務に関連して」他の法令で定める犯罪行為により禁錮以上の刑が確定し、その行為が反復して行われた場合、当該法人の解散を可能にしている。すなわち、一人の行為を理由に、国家が宗教法人全体を解散させることができるのである。
この改正案は、現在拘束中で公判を控えている統一教会の指導者マザー・ハン(韓鶴子総裁)の事案を念頭に置いて起草されたかのように見える。仮に韓総裁に有罪判決が確定すれば、追加的な調査を経ることなく、それだけで教会解散の根拠となり得る。より地位の低い「理事や代理人」に有罪判決が下された場合であっても、同様に解散の引き金となり得る。

出典:Universal Peace Federation
新設される第38条の2は、令状なしに、単に嫌疑を理由として、主務官庁が教会の施設に立ち入り、財務記録や各種文書、資産状況を調査することを認めている。改正案の説明自体が、現行法では調査権限が明確でないことを認めている。その解決策が、司法の統制を排除することでその曖昧さを解消するというものである。これから教会による説教やアドボカシー、政治的見解を好ましく思わない政府は、行政による監視を理由に、予告なしに教会に立ち入り、文書を精査し、踏み込んだ調査を行政的な監視下で行うことができるのである。
最後に、第80条の改正が、この統制の枠組みを決定づける。宗教法人の設立許可が取り消された場合、その残余財産は「他の宗教団体に移転してはならない」とされ、国庫に帰属する。言い換えれば、没収である。解散させられた教会は、その財産を他の教派や宣教団体、あるいは慈善団体に引き継ぐこともできない。建物から銀行口座、さらには聖具に至るまで、すべて国が没収することになる。改正案では、これにより「法人格の濫用」を防止できると主張する。しかし実際には、ひとたび政府が宗教法人を解散させれば、その存在の痕跡を何一つ残さないことを意味している。
これらの規定を総合すれば、政府は最小限の手続き上の制約のもとに、宗教者による批判を封じ、評判の悪い団体を解散させ、その資産を没収することができる法的環境が形成されることになる。改正案で繰り返し言及される「憲法秩序の守護」という文言は、不条理に近い。韓国憲法が保障しているのは宗教の自由であって、教会の説教が政府によって承認されたものかを条件とした宗教の自由ではない。政教分離の原則は本来、政府による宗教への干渉を防ぐためのものであり、政治的目的のために政府に宗教団体を解散させる権限を付与するためのものではない。
もし本改正案が成立すれば、韓国は宗教団体に対して、世界で最も踏み込んだ統制体制を採る国の一つとなり、中国型モデルに近づくことになるだろう。それは、いかなる政治的立場であれ、将来のいかなる政権が、意に沿わない宗教コミュニティを威圧し、沈黙させ、あるいは解散させるための手段を手にすることを意味する。国会が真に憲法秩序を守りたいのであれば、まずはそれを侵害する法律を退けることから始めるべきである。
以下に、法律案の全文を掲載する。
民法一部改正法律案
(崔赫振議員 代表発議)
| 議案番号 | 15932 |
発議年月日:2026年1月9日
発議者:崔赫振・金宇榮・金俊爀
金在原・權七勝・廉泰英
李建台・李盛潤・宋在奉
徐美和・孫率 議員
(11名)
提案理由および主要内容
現行法は、非営利法人が目的外の事業を行った場合、設立許可の条件に違反した場合、またはその他公益を害する行為を行った場合に、主務官庁がその設立許可を取り消すことができると規定している。
しかし、「その他公益を害する行為」という要件はあまりにも包括的かつ抽象的であるため、法的予測可能性が低く、主務官庁の消極的な対応を招いている。特に近年、一部の非営利法人が法人格を濫用し、組織的・反復的に重大な犯罪を犯したり、憲法上の政教分離原則に違反して特定の政治勢力と結託するなどの反社会的行為を行う事例が発生しているが、これを効果的に制裁す るための法的手段が不十分な実情にある。
また、主務官庁が違法行為を認知したとしても、それを確認できる調査権限が明確でないため、実効性のある監督が困難であるという構造的限界が存在する。
これにより、法人の設立許可の取消事由を具体化するとともに、主務官庁の調査権限を明文化し、反社会的法人の残余財産の国庫帰属制度を強化することで、法人格の濫用を防止し、憲法秩序を守護しようとするものである(案 第37条等)。
法律第 号
民法一部改正法律案
民法の一部を次のとおり改正する。
第37条の標題以外の部分を第1項とし、同条に第2項から第4項までを次のとおり新設する。
② 主務官庁は、第1項に基づく検査および監督のために必要がある場合、法人に対して次の各号の措置をとることができる。
関係書類・帳簿またはその他の参考資料の提出命令
所属公務員に、法人の事務および財産の状況を検査させること
法人の代表者または役職員に対する出席および陳述の要求
③ 第2項第2号により法人の事務を検査する公務員は、その権限を示す証票を携帯し、これを関係人に提示しなければならない。
④ 主務官庁は、第2項に基づく措置をとる前に、法人に対して意見提出の機会を与えなければならない。ただし、緊急を要する場合または意見提出の機会を与えると監督の目的を達成できないと認められる場合には、この限りでない。
第38条を次のとおり改正する。
第38条(法人の設立許可の取消し)① 主務官庁は、法人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その設立許可を取り消すことができる。
目的以外の事業を行ったとき
設立許可の条件に違反したとき
正当な理由なく設立許可を受けた日から1年以内に目的事業を開始しないとき、または1年以上事業実績がないとき
法人の代表者、理事またはその代理人が、法人の業務に関連して他の法令で定める犯罪行為により禁錮以上の刑が確定し、その行為が法人の組織的次元において反復して行われたとき、または法人がこれを黙認したとき
法人が「大韓民国憲法」第20条第2項に定める政教分離の原則、または「公職選挙法」等の関係法令に違反し、選挙、政党または候補者に関連して組織的・体系的に関与し、公益を著しく害したとき
第1号から第5号までの事由に準ずる重大な行為として、法人がその他法令に違反し、または公益を著しく害する行為を行ったとき
② 主務官庁は、第1項に基づき設立許可を取り消そうとする場合には、聴聞を実施しなければならない。
③ 主務官庁は、第1項各号の事由がある場合であっても、その違反行為の程度が軽微であるか、または是正が可能なときは、期間を定めて是正を命ずることができる。この場合、法人がその期間内に是正しないときは、設立許可を取り消すことができる。
第38条の2を次のとおり新設する。
第38条の2(業務および財産状況の調査)① 主務官庁は、法人が第38条第1項各号のいずれかに該当する事由があると疑うに足りる相当な理由があるときは、当該法人に対し、業務および財産状況に関する報告を命じ、または必要な資料の提出を求めることができる。
② 主務官庁は、第1項による確認のために必要がある場合、所属公務員に、法人の事務所、事業場またはその他の場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、または関係人に質問させることができる。
③ 第2項に基づき、立入り・検査または質問を行う公務員は、その権限を示す証票を携帯し、これを関係人に提示しなければならない。
④ 第2項に基づく立入り・検査または質問は、犯罪捜査のためのものと解してはならない。
第80条に第4項および第5項をそれぞれ次のとおり新設する。
④ 法人が第38条第1項第4号または第5号に該当して設立許可が取り消された場合には、第1項および第2項にもかかわらず、その残余財産は国庫に帰属する。
⑤ 第4項により国庫に帰属した財産は、主務官庁が管理し、類似の公益目的のために使用することができる。
附則
第1条(施行日) この法律は、公布の日から6か月を経過した日より施行する。
第2条(適用例) 第80条第4項の改正規定は、この法律の施行後に法人が第38条第1項第4号または第5号に該当して設立許可が取り消された場合から適用する。
第3条(経過措置) この法律の施行の際、進行中である法人に対する調査または監督手続については、第38条の2の改正規定を適用する。
新旧条文対照表
| 現行 | 改正案 |
| 第37条(法人の事務の検査、監督) | 第37条(法人の事務の検査、監督) |
| (省略) <新設> <新設> <新設> 第38条(法人の設立許可の取消し) 法人が目的以外の事業を行った場合、設立許可の条件に違反した場合、またはその他公益を害する行為を行った場合に、主務官庁がその許可を取り消すことができる。 | ①(現行の標題以外の部分と同じ) ② 主務官庁は、第1項に基づく検査および監督のために必要がある場合、法人に対して次の各号の措置をとることができる。 1. 関係書類・帳簿またはその他の参考資料の提出命令 2. 所属公務員に、法人の事務および財産の状況を検査させること 3. 法人の代表者または役職員に対する出席および陳述の要求 ③ 第2項第2号により法人の事務を検査する公務員は、その権限を示す証票を携帯し、これを関係人に提示しなければならない。 ④ 主務官庁は、第2項に基づく措置をとる前に、法人に対して意見提出の機会を与えなければならない。ただし、緊急を要する場合または意見提出の機会を与えると監督の目的を達成できないと認められる場合には、この限りでない。 第38条(法人の設立許可の取消し) ① 主務官庁は、法人が次の各号のいずれかに該当する場合には、その設立許可を取り消すことができる。 1. 目的以外の事業を行ったとき 2. 設立許可の条件に違反したとき 3. 正当な理由なく設立許可を受けた日から1年以内に目的事業を開始しないとき、または1年以上事業実績がないとき 4. 法人の代表者、理事またはその代理人が、法人の業務に関連して他の法令で定める犯罪行為により禁錮以上の刑が確定し、その行為が法人の組織的次元において反復して行われたとき、または法人がこれを黙認したとき 5. 法人が「大韓民国憲法」第20条第2項に定める政教分離の原則、または「公職選挙法」等の関係法令に違反し、選挙、政党または候補者に関連して組織的・体系的に関与し、公益を著しく害したとき |
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<新設> 第80条(残余財産の帰属)①〜③(省略) <新設> | 6. 第1号から第5号までの事由に準ずる重大な行為として、法人がその他法令に違反し、または公益を著しく害する行為を行ったとき ② 主務官庁は、第1項に基づき設立許可を取り消そうとする場合には、聴聞を実施しなければならない。 ③ 主務官庁は、第1項各号の事由がある場合であっても、その違反行為の程度が軽微であるか、または是正が可能なときは、期間を定めて是正を命ずることができる。この場合、法人がその期間内に是正しないときは、設立許可を取り消すことができる。 第38条の2(業務および財産状況の調査)① 主務官庁は、法人が第38条第1項各号のいずれかに該当する事由があると疑うに足りる相当な理由があるときは、当該法人に対し、業務および財産状況に関する報告を命じ、または必要な資料の提出を求めることができる。 ② 主務官庁は、第1項による確認のために必要がある場合、所属公務員に、法人の事務所、事業場またはその他の場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、または関係人に質問させることができる。 ③ 第2項に基づき、立入り・検査または質問を行う公務員は、その権限を示す証票を携帯し、これを関係人に提示しなければならない。 ④ 第2項に基づく立入り・検査または質問は、犯罪捜査のためのものと解してはならない。 第80条(残余財産の帰属)①〜③(現行と同じ) ④ 法人が第38条第1項第4号または第5号に該当して設立許可が取り消された場合には、第1項および第2項にもかかわらず、その残余財産は国庫に帰属する。 ⑤ 第4項により国庫に帰属した財産は、主務官庁が管理し、類似の公益 |
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<新設> | 目的のために使用することができる。 |

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


