BITTER WINTER

日本:大著『国家の生贄』。4.言論封殺

by | Jan 31, 2026 | Documents and Translations, Japanese

日本のメディア大半を支配する「悪なる統一教会」というナラティブに異を唱えることは、ほぼ不可能になっている。

Bitter Winterによる書評

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Poster for Masumi Fukuda’s book.
福田ますみ氏の著書のポスター

福田ますみ氏のベストセラー『国家の生贄』を読み解く本連載は引き続き、憲法上の自由を重んじるべき民主主義社会が、ある特定の事実については公然と議論できない状況へと、いかに転落したのかを検証する。本稿で議論するパートでは、福田氏はメディア、司法、そして公安警察に目を向ける。彼女は、圧力や偏見、政治的都合によって、いかに数々の歪曲や不当な判断が生み出されたのかを明らかにする。

第8章では、静かでありながらも強力な、文科省による言論封殺の実態を明らかにする。

福田氏はまず、次の事態を指摘する。現在の日本では、家庭連合に少しでも有利な情報や、拉致監禁による信者たちの被害を伝えることは事実上タブーとなっている。とりわけ安倍元首相暗殺以降、メディアでは被害者と加害者が逆転したかのようなナラティブが横行していると指摘する。

こうした偏向の背景に、福田氏は「見えないプレスコード」が存在すると指摘する。それは明文化されてはいないが、暗黙の了解として共有されている――“反家庭連合ナラティブ”に異を唱えるような内容は、決して報じてはならない。

福田氏は、この「見えないプレスコード」が実際にどのように適用されているのか、具体例を示している。実際に文科省は、家庭連合に有利な報道を行ったテレビ局に対し抗議を行ってきた。ある記者は出入り禁止を命令された。さらに、日本の公共放送であるNHKも、教団側の主張と取れるような内容を報じたことで文科省を怒らせ、結果的に報道の修正や自制を余儀なくされた。

福田氏は、こうした国家による圧力とメディアの自己検閲が相互関係を生み、言論を萎縮させていると警告する。政府と左翼的な大手メディアの利害が一致しているため、こうした言論封殺に対する抗議すら起きない状況である。その委縮効果は完璧である。

第9章では、福田氏は高額献金者たちの胸の内に焦点を当てる。政府が解散命令請求の根拠とするのは「高額献金被害」である。しかし福田氏は、その実態が、大衆が信じさせられてきた事実と異なると論じる。

文化庁と全国弁連は多数の被害者から聞き取りを行ったと主張する。しかし、その多くは何年も前にすでに解決済みの事例であり、重要な点として、現役信者たちには一切聞き取りを行っていなかった。その代わりに、限られた一部の元信者によって物語が作られたのである。その多くがディプログラミングや親族の圧力によって信仰を失い教会を離れた人々だった。さらに、全国弁連はしばしば、「訴訟をすればお金は返ってくる」などと人々に訴訟を煽ってきた点についても指摘している。

福田ますみ氏の著書を手にする家庭連合二世の会のメンバー
福田ますみ氏の著書を手にする家庭連合二世の会のメンバー

一方高額献金を行ってきた現役信者は、まったく異なるストーリーを語る。彼らは自らの信仰と価値観に基づいて献金してきたのであり、強制や脅迫は一切なかったと語る。ところが、全国弁連が関与した訴訟では、こうした現役信徒の証言は顧みられず、事実と異なる供述が定型文のように用いられた。

続いて福田氏は、解散命令の根拠とされた、教団の賠償責任を認めた32件の裁判にも目を向ける。詳しく検証すると、その原告の過半数は、拉致監禁を経て信仰を放棄するよう圧力を受けた元信者であることが判明した。これらの重要な事実は、解散命令に至る非公開の審問において十分に検証されなかった。

福田氏は、このような曖昧な事実と推測に基づいて作られたナラティブを根拠に、日本が一つの宗教団体を解散させようとしていることへ警鐘を鳴らす。

第10章で福田氏が分析するのは、「念書裁判」とマインド・コントロール幻想の再来である。安倍元首相の暗殺以前、家庭連合側の勝訴率は回復傾向にあり、裁判所も証拠に基づく判断を行うようになっていた。しかし事件後、その流れは断ち切られる。

それをよく示しているのが「念書裁判」だと福田氏は語る。この事件で家庭連合は、下級審において全面勝訴を収め

/ていた。事実関係はシンプルに見えた――高齢の母親は、自らの意思で献金を行い、後に家族が返金請求を行わないよう、念書や動画まで残していた。三女も、母親の選択を支持していた。

献金の返還を求める長女は、母親を三女から切り離すため隔離し、後見制度や医師の診断書を用いて訴訟を起こした。三女の調査により、原告側の主張には虚偽が多く含まれていることが判明し、下級審ではこうした事情を踏まえ、教団側が勝訴した。

そこに最高裁が介入した。最高裁は、母親が「教団の心理的影響下にあった」として、この判決を覆したのである。

福田氏は、この判決をきわめて危険なものだと厳しく批判する。なぜなら、すでに否定されてきた“洗脳”理論を日本の法制度に持ち込むものだからである。もしこれが受け入れられれば、「心理的影響」といった曖昧な概念を根拠に、自らの意思による献金は全て無効とされ、裁判所が信教の自由を脅かすことになりかねない。

“Sacrifice to the Nation” on sale in Japan.
日本で販売されている『国家の生贄』

第11章で福田氏は、2009年に起きた「新世事件」を検証する。この事件は、公安によって仕組まれた冤罪だった。また、この事件は家庭連合がコンプライアンス宣言をするきっかけとなった出来事とされている。しかし、福田氏はこの事件は正当な調査ではなく、公安による国策捜査そのものだったと論じる。

統一教会系の企業とされた印鑑販売会社「新世」の代表らは、特定商取引法違反の容疑で逮捕された。しかし、その違法性は極めて曖昧だった。警察は会社事務所や教会を家宅捜索し、押収した顧客名簿を使い、「たくさんの被害届が出ている」などと虚偽の文句で顧客に直接連絡したのである。

しかし、家宅捜索のきっかけとなった被害者は、結局裁判で被害者とされた5名の中に存在せず、事件そのものが立件のために仕組まれた疑いが強い。告発が先行し、証拠は後から集められたのである。

さらに、検察側証人として登場した元信者は、拉致監禁を経て脱会した人物で、虚偽証言の疑いも指摘されている。福田氏は、新世の経営者や販売員は冤罪の被害者であり、公安が本来狙っていたのは教団本体だったとみる。

その背景に、教団に反対する者が警察や司法に虚偽の情報を流していた可能性を指摘し、反統一教会陣営と公権力との関係に重大な疑問を投げかけている。

第12章で福田氏が検証するのは、もう一つの冤罪事件――拉致監禁やディプログラミングの事実が無視された、“ストーカー規制法違反事件”である。本章の主人公は、統一教会の信者である男性A氏。A氏はストーカー規制法違反の容疑で突如逮捕されたが、その行為とは、合同結婚式の後に突然消息を絶った婚約者Bさんを探したことだった。信者が親族によって拉致監禁される事件が頻発していたため、A氏は彼女も連れ去られたのではないかと強い危機感を抱いた。

彼が抱いた懸念は、決して根拠のないものではなかった。やがてA氏は、日本の強制棄教ネットワークの中心人物・宮村峻氏が監禁に使用していたマンションにBさんがいることを突き止める。しかし裁判では、こうした重要な背景は一切扱われなかった。A氏の行動の原因であるはずの拉致監禁の可能性は黙殺され、結果、A氏に有罪判決が下されたのである。

福田氏は、この事件に公安が関与した理由として、背後に教団の組織的関与を疑ったためだと推測する。しかし、そのような組織的関与は見つからなかった。もし公安の見立てが誤っていれば、A氏は教団を陥れるための単なる“駒”として利用されたことになる。

福田氏は、新世事件と同様、この事件も冤罪であったと警告する。


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