4人の特別報告者が署名した国連の公式文書が,日本に宗教的自由の重大な危機が存在することを初めて認めた。
マッシモ・イントロヴィーニュ著
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宗教または信条の自由に関する国連特別報告者ナジラ・ガネア氏,教育に対する権利に関する特別報告者ファリダ・シャヒード氏,意見と表現の自由に対する権利の促進と保護に関する特別報告者アイリーン・カーン氏,平和的集会及び結社の自由に対する権利に関する特別報告者クレマン・ニャレツォシ・ヴール氏による日本政府宛書簡(2024年4月30日付)がこのたび公開された。この書簡の説明の通り,特別報告者がこのような声明を公開するのは,被申立国政府にその回答を求めてから60日後というのが通例である。
この声明は,日本の厚生労働省が2022年12月27日に発表し物議を醸している「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」について述べている(全訳は「The Journal of CESNUR」に掲載された)。このQ&Aは,2022年に安倍晋三元首相が殺害された後に発布された一連の法律,ガイドライン,行政規則の一部である。安倍元首相は,旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)に協力していたことを罰しようとした男に殺害された。男の母親は2002年に自己破産しており,それは旧統一教会への過剰な献金が原因だったとされ,そのため男は元首相に恨みを抱いていたのである。その後,「カルト」撲滅キャンペーンが展開されたが,Q&Aはその副産物の1つである。
国連の声明にあるように,「Q&Aガイドラインが作成されたのは,2022年7月8日に起きた安倍晋三元首相の暗殺事件で,一部の宗教団体の活動が殺人の動機として挙げられたため,一部の宗教的または信条的マイノリティに対する監視や批判が高まったことが背景にあり」,民間の反カルト団体と協議して作成された。「このガイドラインは,日本脱カルト協会(JSCPR)と協議して作成され,その代表理事は,2022年10月に宗教団体による新しいタイプの児童虐待の認定を求めました。さらに同協会は,以前からエホバの証人やその他の宗教的または信条的マイノリティを誹謗中傷する発言を公にしています」。
この声明はさらにこう述べている。「Q&Aガイドラインは,エホバの証人について直接言及してはいませんが,彼らの慣行と活動は,この新しい方針の対象になっているようです。Q&Aガイドラインの作成にあたっては,それが慎重に扱うべき内容で,すべての宗教または信条のコミュニティに関係するにもかかわらず,エホバの証人を含む宗教的または信条的マイノリティも,その作成中に意見を求められることはありませんでした。エホバの証人は再三,厚生労働省との面会を求めていましたが,Q&Aガイドラインが完成するまで,面会は認められませんでした」。
4人の報告者たちは,このQ&Aガイドラインが「宗教の信仰等を背景とする」児童虐待という,問題を含む概念に基づいていることを正しく観察しており,「ガイドラインのいくつかの箇所は,宗教的な文脈における虐待の成立の基準を,非宗教的な文脈と比較して低く設定しているように見受けられます」と指摘している。つまり,Q&Aガイドラインは,宗教行事に参加するよう子どもを説得する親の圧力は虐待としているが,例えばスポーツのトレーニングや音楽またダンスのレッスンに参加するよう説得する親の圧力は虐待とはしていない。親が宗教的な動機に基づき,子どもがある種の娯楽に参加することに反対すれば,それは虐待と見なされるが,政治的また文化的な動機で反対すれば,それは虐待と見なされない。また,子どもたちに自分の宗教を示す装飾品等を身に着けるよう求めてはならないとする一方,政治団体,芸術団体,スポーツ団体への支持を示す装飾品等については,同様の規定を設けてはいない。
声明はさらにこう付け加えている。「ガイドラインのいくつかは,虐待の可能性を立証する根拠として,「社会通念」,「社会的相当性」からの逸脱に曖昧に言及し,それによって,宗教または信念を表明する自由に含まれる信教の多様な表現を制限しています」。報告者たちは日本に対し,国家の介入が「必要性や均衡性」によって正当化されるまれなケースを除いては,国家は国民が多数派とは異なる生活様式や習慣を採用し,子どもたちに伝えることを妨げることはできないと念を押している。
「Bitter Winter」が報じたように,Q&Aガイドラインが出されるとすぐに,エホバの証人やその他の宗教的マイノリティに対する差別と憎悪の風潮が生み出された。「Q&Aガイドラインの公表について多くのメディアが報道し,中にはエホバの証人を含む宗教的または信条的マイノリティが児童虐待の罪を犯していると非難するメディアもありました。エホバの証人は,……過去6年間と比較して,2023年にはヘイトクライムが638%増加したと報告しています。報告された事件には,2024年2月11日に千葉県八千代市で起きた高齢のエホバの証人に対する身体的暴行が含まれています。同月には,神戸市の兵庫区と北区で,エホバの証人を大量殺害すると脅迫する手紙が礼拝所に残されました。こうした事態に伴い,ネット上また直接的なヘイトスピーチや差別および暴力の扇動が増加し,その中にはQ&Aガイドラインに直接言及したものもありました」。さらにQ&Aガイドラインによって,エホバの証人の実態に関する調査や,学校でのパンフレット配布が行われることになった。そうしたことは,「日本における宗教的または信条的マイノリティに対する批判と否定的な態度の高まりを背景に」生じてきた。
これらすべては,「中立と非差別の原則に反するだけでなく,宗教的または信条的マイノリティに対する偏見と疑念を助長することになりかねません」と報告者たちは述べている。また,「宗教的または信条的マイノリティに対する疑念が高まっている状況において,現行のQ&Aガイドラインが,宗教または信条のコミュニティに属する子どもたちに対する偏見,社会的圧力,いじめを助長する可能性があること」や,エホバの証人やその他のグループに対する「ヘイトクライムやヘイトスピーチの増加,また憎悪の扇動,差別,暴力の増加」を懸念している。
報告者らは日本に対し,人権および信教の自由に関する国際法の義務を遵守し,差別やヘイトクライムを防止するための措置を直ちに講じるよう求めた。声明は,国連が日本について受け取った情報は「十分な信頼性があり,早急に注意を払うべき事案である」と指摘している。また,「上記の事案が与える潜在的な影響について,広く一般に注意を喚起すべきであると考えています」と述べている。
日本政府は6月27日,この声明に対して非常に薄弱な回答を提出した。このガイドラインは非宗教的な児童虐待にも適用されると政府は主張しているが,タイトルと序文に明確に「宗教」と書かれている以上,これは誤りである。「調査」および関係する「当事者たち」との「協議」に基づく方法論を主張しているが,インタビューや協議を行った相手というのは,反カルト主義者たちか,反カルト主義者たちが選んだ棄教した元信者である。「調査」も,反カルト主義者たちによって考案され実施されたもので,明らかに誘導的な質問に基づいている。日本政府はまた,エホバの証人や他の少数派に対する暴力を煽る意図はなかったと述べている。これは事実かもしれないが,差別を研究する学者であれば誰もが,マイノリティを公に悪者扱いしたり中傷したりすれば,暴力を生み出すことは避けられないと,事前に進言していたであろう。
今回の国連声明は,安倍元首相銃撃事件後の日本で,宗教的マイノリティが「カルト」の汚名を着せられているという状況において,非常に重要な文書であり,画期的なものである。高位の国際機関が初めて,日本が宗教的自由の重大な危機を迎えていること,そして「早急に注意を払うべき」危機を迎えていることを認めたのである。