2025年3月の家庭連合への解散命令は、国際法上の日本の義務に反する
パトリシア・デュバル
この文章は2025年10月10・11日にリトアニア・カウナスのヴィータウタス・マグヌス大学で開催された国際会議「Resilient Memories in East Asia: Remembrance, Acknowledgment, Reconciliation」(東アジアの回復する記憶:追憶・認識・和解)で発表されたものである。
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第二次世界大戦後、日本は国際社会における威信を取り戻すことを目指しました。新しい憲法を制定し、基本的人権、とりわけ日本国民の宗教または信条の自由の保護を約束し威信の回復を願いました。
しかし日本は今日に至るまで、憲法と法律の中に、市民の自由に対して極めて問題のある例外規定を残しています。それは、「公共の福祉」です。
曖昧で個人の自由に無制限の解釈を許しかねないこの制限は、民主国家にふさわしいものではありません。むしろバナナ共和国や独裁国家のような、国家への反対勢力や少数派は公共の福祉に反するとしてラベルを貼り、国家が市民の福祉とはなにかを決定するような国で見られる概念です。
特に、この概念を宗教や良心の自由に適用することには重大な疑問があります。
しかし、日本当局は今まさに、この曖昧で恣意的な概念を根拠に、日本に約60万人の信者を抱える宗教法人、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散を進めようとしているのです。
このような理由から、10月1日国連の特別報告者4名が公式に声明を発表し、日本におけるこの憂慮すべき状況に懸念を示しました。
それでは、こうした事態に至った背景を見てみましょう。
統一教会の日本人信者たちは、過去数十年にわたり、日本で嫌がらせや差別的扱いを受けてきました。
信者たちはしばしば、あたかも民族的少数派であるかのように扱われ、教団の創設者である文鮮明・韓鶴子総裁が韓国人であり、教会そのものも韓国で生まれたという理由から「反日」だと非難されることさえありました。
歴史的に日本人の中には、かつての朝鮮半島の植民地支配を背景に、韓国人に対して優越感を抱いたり、軽視する傾向も存在します。
こうした背景のもと、家族の一員が統一教会に入会すると、家庭内で激しい反対が起きました。それには民族的偏見に基づく三つの理由があります。(1) 創設者が韓国人であること、(2) 韓国発祥の宗教であること、(3) 信者が韓国人と強制的に結婚させられるのではないかという恐れ。
こうした偏見は、教団に入った子供を家族が暴力的に「ディプログラミング」する引き金となりました。
日本政府は約半世紀にわたって、過激な反カルト弁護士や宗教による統一教会信者への「ディプログラミング」を黙認してきました。それは家族による拉致、違法な監禁を伴い、その後プロテスタント系牧師らが教会の教えを否定する「刷り込み」を強制的に行うというものでした。
何千人もの親たちが反カルト活動家に説得され、成人した子どもである信者を「ディプログラミング」するよう仕向けられました。
信者たちはディプログラマーや弁護士から圧力を受け、本当に信仰を棄てる意思があることを証明し、監禁から解放されるために、教団を相手に損害賠償請求訴訟を起こすよう強要されました。
その結果、過去40年にわたり、教団を相手取った民事訴訟がいくつも起こされました。これを主導したのが、政治的意図をもつ弁護士ネットワークで「全国霊感商法対策弁護士連絡会」です。彼らは、統一教会が東アジアにおける無神論的共産主義と闘ってきたことから、統一教会の排除を宣布してきました。
この弁護士たちにとって絶好の機会となったのが、安倍元首相暗殺事件です。
2022年安倍晋三元首相は、約20年前に母親が教団へ献金していたことを恨んでいた男に銃撃され、命を落としました。報道によれば犯人は安倍氏がある教団の人道的活動を支持したという理由から彼を標的に定めたといいます。

犯人逮捕後、全国弁連の主導で、統一教会を標的とするメディアの一斉攻撃が始まりました。
暗殺事件を受けて2022年7月に開かれた全国弁連による記者会見では、弁護士たちが次々と統一教会を激しく非難しました。彼らは「安倍首相の暗殺犯とその母親は100%被害者であり、“カルト”は100%加害者」と断言し、教団を「反社会的」「巨大な悪」とまで非難したのです。
教団を追及する弁護士やメディアは、統一教会が韓国発祥という理由から、「反日」というレッテルを貼りました。
こうして、「韓国発祥の宗教が日本の元首相の暗殺を起こした」という反韓的な感情を日本の国民に植え付けたのです。家庭の中にとどまっていた敵意を、国家レベルの感情へと拡大させていったのです。
メディアの過熱報道は、政府に対して教団との関係を断絶するよう強い圧力をかけました。さらに、全国弁連からの非難を受けながら、政府関係者は統一教会に現状への責任を負わせる形で、宗教法人に対する解散手続きを進めました。
こうして宗教部門を所管する文部科学省は2023年10月、東京地裁に解散命令を請求しました。その際、文科省は次のように主張しています。「統一教会信者は、昭和55年頃から令和5年頃まで、個人の自由な意思決定に制限を加えて、正常な判断が妨げられる状態で献金をさせ(“洗脳”の非難)、親族を含む多数の者の生活の平穏が害されてきた。」
文科省は、「生活の平穏が害された」という主張を裏づける根拠として、元信者らが起こした32件の民事訴訟の判決を引用しています。これらの訴訟の多くは信者が「ディプログラミング」された後に提訴されたものであり、いずれも20〜40年前のものです。この全ての裁判において、裁判所は「社会的相当性」や「社会規範」といった、曖昧で成文化されていない基準に基づき不法行為判決を下し、恣意的な断罪を可能にしてきたのです。
こうした判断をもとに、東京地方裁判所は本年3月25日、宗教法人法第81条に基づき解散を命じる判決を下しました。同条は、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」により裁判所は解散を命ずることができるとしています。
「社会規範」という言葉は、定義も成文化もされていない概念であるにも関わらず、裁判所は教団が「社会規範」に反したという理由で法令違反としました。自由権規約第18条3項で示すように、宗教または信条の自由というのは「法律で定める」ものであり、「社会規範」といった概念はそのような法律による明確な基準を満たしていません。日本はこれらの規約に署名し、締約国としてその義務を負っています。
現在地裁による解散命令は、東京高等裁判所に抗告され審理が続いています。
ここで、「公共の福祉」および「社会的相当性」(または社会規範)という概念を、国際人権基準の観点から考えてみましょう。
自由権規約の履行状況を監視するために設置された国連自由権規約人権委員会(The UN Human Rights Committee)は、これまで一貫して日本に対し、「公共の福祉」という概念を宗教または信条の自由の制限に用いることをやめるよう強く勧告してきました。
日本は1979年に同規約を批准し、同委員会による監視の権限を受け入れています。
翌1980年から委員会は、日本の法律に市民的自由を制限するため「公共の福祉」という概念が導入されていることを繰り返し非難し、次のような勧告をし続けてきました。「当委員会は、『公共の福祉』の概念が曖昧かつ無限定であり…(中略)締約国に対し、第18条に定められた厳格な要件を満たさない限り、思想、良心および宗教の自由に対していかなる制限も課さないよう強く求める。」
実際に同規約第18条3項は次のように定めています。「宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。」
したがって、公共の安全や秩序の保護であれば一定の制限が認められるものの、「公共の福祉」の保護はそれに含まれず、厳格に解釈されなければなりません。したがって、「公共の福祉」を理由に宗教の自由を制限することは許されません。
つまり日本当局は45年前から、自由権規約に従うため日本の法律を見直す必要があることを認識していたと言えます。それにもかかわらず、日本は虚偽の口実のもとに国際的なコミットメントを破り、見直すことを拒んできました。
そして今、日本はこの違法な根拠に基づいて、ひとつの宗教を完全に根絶させようとしています。
加えて、「社会的相当性」や「社会規範」といった概念は、プロテスタント牧師らによってディプログラミングのような事態が起きたように、主流派の宗教による差別や支配を正当化しかねません。
これは自由権規約第18条に関する国連人権委員会の総評22で示されている基準に完全に反しています。「信条および宗教という語は広く解釈されなければならない。第18条の適用は、伝統的な宗教、または伝統的な宗教と類似する制度的特徴や実践をもつ宗教および信条に限定されない。従って委員会は、 あらゆる理由に基づく宗教または信条に対する差別の傾向を懸念している。あらゆる理由の中には、それらが新宗教であるという事実または支配的な宗教コミュニティーからの敵意の対象となりうる宗教的マイノリティーであるという場合も含まれる。」
したがって、日本の法律上の違反や犯罪が存在しない中、宗教的実践が「社会的相当性」を欠く、または「社会規範」に反するという理由で、宗教または信条を表明する権利を世論の敵意によって裁判所が制限するということは、決して正当化されません。
それにもかかわらず、解散命令の根拠となった32件の民事判決は、全て上記のような理論に基づいていたのです。

このような理由から、国連の各分野のトップの専門家である、人権理事会の特別報告者4名(宗教または信条の自由、少数民族問題、結社および集会の自由、教育の自由)が、2025年10月1日、日本政府に対して声明を発表しました。彼らは、日本が自由権規約第18条3項で厳格に定められた範囲を超え、宗教や信条の表明を不当に制限することをやめるよう警告しています。
東京高裁が第一審判決の法的根拠を見直し、解散問題をこれらの勧告を踏まえ、再検討することを強く望みます。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a Master in Public Law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.


