日本政府による教会の信教の自由に対する制限は、自由権規約第18条第3項で認められている制限には含まれていない。
パトリシア・デュバル著
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自由権規約第18条第3項によれば、統一教会(UC)信者がその信仰を表明する権利を(解散によって)制限するには、その制限は、先ず、法律によって規定されていなければならない。
宗教法人法第81条1項は、宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」場合に、裁判所が宗教法人の解散を命じることができると規定している。
- 日本の法律
本件では、文部科学省の解散命令請求において、社会規範違反を理由にいくつかの日本の民事裁判で献金勧誘行為に違法性(民事上の違法行為。不法行為を構成)が認定されたことが法令違反に該当するとされた。
しかしながら、解散命令請求申立書における文科省の主張とは逆に、私人間の民事訴訟における不法行為(損害)認定は、法令違反を構成しない。
日本民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定する。
この法律の条文は、不法行為を行った者に対し、他人に及ぼした損害の賠償を義務付けている。この法律に違反するのは、不法行為者が損害賠償を支払わない場合である。統一教会は、判決で認められた損害賠償責任を履行して支払ったのだから、709条を遵守している。
米国の法律家らにとっての法律用語参照の際の定番文献である「ブラック法律辞典」は、不法行為を「契約違反以外の民事上の違法行為で、通常、損害賠償の形で救済を得ることができるもの」と定義付けている。

民事上の不法行為は法律違反ではない。
文科省は、統一教会に対する不法行為の認定は、統一教会が民法第709条に違反したことを意味すると主張している。その主張の要点は、この条文の不法行為規定が、故意または過失による他人の権利の侵害を禁止しているということである。
しかし、全ての人に対して他者に対するいかなる不法行為をも禁止するような法条項は、以下のような性質を持つことになる。
- 完全にユートピア(理想論)である。
- あまりにも広範囲に適用され、全体主義国家のように、完全に恣意的かつ独断的な方法で適用され得る。
- あまりにも曖昧であり、日本が遵守義務を負うすべての国際人権基準と直接対立する。
法律の精細性と予測可能性の必要性については、以下の章にある国連人権委員会の法的見解および判例を参照して頂きたい。
したがって、民事上の不法行為が認定されたとしても、不法行為による損害賠償を規定する民法の条文に違反したと解釈することはできない。
本件では、統一教会は、宗教法人法第81条(i)が適用され解散の効果が生じるような成文法違反は犯していない。
その証拠に、政府は「不当な勧誘」を抑制するために新法を制定した。令和4年12月には、「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」が制定され、「寄付の不当な勧誘」を犯罪化した。(令和4年12月16日制定法律第105号)
したがって、不法行為を理由とする解散命令請求が行われはしたものの、裁判所による不法行為判決当時には、献金を規制する成文法は存在していなかったことになる。元より、新法は遡及適用できない。
日本は成文法の国であるが、判例法も「法律違反」に含まれるとの主張があるかも知れない。しかし、日本の最高裁判所はこれとは反対の判断を下している。判例違反を法令違反とみることはできない。
オウム真理教に対する解散命令請求事件では、検察官と東京都知事によって提起された解散命令請求訴訟において、東京高等裁判所が「法令違反」の意義について判示した。裁判所は、「法令違反」とは、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものとしている。この解釈は、平成8年1月30日付最高裁判決によって支持されている。(最高裁判所平成8年(ク)第8号事件)
よって、日本政府が申し立てた解散命令請求に宗教法人法81条1項を適用することはできない。
そして、この解散命令請求は自由権規約第18条第3項の「法律で定める制限」の要件を充たしていない。
以上より、解散命令請求は、日本国が締結した自由権規約18条3項が要求する「法律によって規定」との要件を充たしていない、と結論づけることができる。
- 自由権規約人権委員会の法的見解及び先例法
いずれにしても、自由権規約の元において、「法律によって規定」との要件がある以上、ここで言う法律は、市民が制裁を予測し、それに応じて行動を制御できる程度に十分に精細でなければならない。
自由権規約人権委員会は、加盟国による自由権規約の適正な適用を監督し、この点に関する指針を提供している。特に、規約によって保護される権利に対する制限全てに共通する「法律によって規定」との要件について、詳細に述べている。

これら各権利に対する制限は、すべて法律によって規定されていなければならない。そして、この要件に関する委員会の先例(委員会に付託された個別通報事件における判断)は、これらの権利全てに適用される。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a Master in Public Law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.


