統一教会に対する複数の不法行為訴訟を起こすことは、教会を破壊するための戦略の一部であり、宗教の自由に関する国際的基準に違反する。
パトリシア・デュバル著*
*2024年9月22日に国連の複数の事務所に送られた報告書
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以下の報告書は、世界平和統一家庭連合(以下、分かりやすくするために「教会」、「統一教会」または「UC」と表記)を主題としている。
背景—国連の特別手続きの適用
我々は、被害者の会を代表して2013年7月23日に宗教または信念の自由に関する特別報告者に提出した、日本における拉致と強制棄教(「ディプログラミング」と呼ばれる)に関する、我々の前回の報告書に言及する。
本報告書は、日本におけるこうした活動に関するフォローアップである。こうした活動の結果、ディプログラムされて背教者となり、「詐欺的かつ洗脳的な伝道」(神戸地裁判決83ページを参照、大阪高裁もこれを支持した)に対して苦情を訴えさせられた信者らにより、教会に対する不法行為訴訟が雪崩のように起こった。
これらの不法行為訴訟はその後、政府が、現在係争中の教会解散手続きを開始するための根拠として使われている。
ディプログラミングに関する報告書では、そうした行為の被害者からの被害陳情等も含めて事例が文書化され、当時、自由権規約人権委員会にも送付された。
自由権規約人権委員会は、日本に対する第6回定期的審査でこの問題を取り上げ、問題を無視しようとする日本政府とやり取りをした後、警察と司法が行動を起こすことを拒否しているという証拠をわれわれが提示した結果、2014年8月20日の総括所見CCPR/C/JPN/CO/6)に以下の勧告を盛り込んだ:「拉致と強制的棄教 21.委員会は、新宗教運動の回心者を棄教させるための、彼らに対する家族による拉致および強制的な監禁についての報告を憂慮する(2条、9条、18条、26条)。締約国は、全ての人が自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない権利を保障するための、有効な手段を講ずるべきである。」
数か月後の2014年11月14日、初めて、そのような悪行の被害者である後藤徹氏が、家族と2人のディプログラマーに対する民事訴訟で、東京高等裁判所において多額の損害賠償を勝ち取った。これは、後藤氏の信仰を棄てさせようとして失敗に終わった12年間の不法監禁と強制的な説得に対する賠償であった。裁判所は、後藤氏が被った損害に見合った賠償を認め、松永堡智牧師によるディプログラミングそのものが違法であるとの判決を下した。この判決は、間もなく最高裁判所によって支持された。

その後、このディプログラミングの活動は終わったかのようにみえたが、統一教会とその信者を排除しようとする試みは継続し、今日に至って激増した。
この報告書は、教会の解散の脅威につながる一連の不法行為訴訟、教会資産の剥奪、統一教会向けに新調した2つの新しい法律の制定、二世信者に対する国家による新しい形のディプログラミングの実施、および信者に対するその他の深刻な差別問題、などの展開について述べる。
また、長年にわたり、自由権規約人権委員会が日本政府に対して、「公共の福祉」に基づいて宗教または信念の自由の権利を違法に制限してきたことに関して、定期的に新たな勧告を出してきたことも強調しておく必要がある。
2008年、2014年及び2022年の総括所見において繰り返し、同委員会は日本政府に対し、以下のとおり勧告した(2008年12月8日、CCPR/C/JPN/CO/5 §10、2014年8月20日、CCPR/C/JPN/CO/6、及び2022年11月30日、CCPR/C/JPN/CO/7 §37)。「『公共の福祉』を理由とする基本的自由の制限。21. 当委員会は、『公共の福祉』の概念が曖昧かつ無制限であり、規約(第2条、第18条及び第19条)で許容される範囲を超える制限を許す可能性があることに対する懸念を、もう一度繰り返して表明する。当委員会は、前回の総括所見(CCPR/C/JPN/CO/5、第10項参照)を想起し、締約国に対し、第18条および第19条第3項に定められた厳格な条件を満たさない限り、思想、良心および宗教の自由または表現の自由の権利に対するいかなる制限も課さないよう強く求める。」
日本は、これらの度重なる勧告に決して従わなかった。なぜなら、日本国憲法は、現在に至るまで、「公共の福祉」の保護を根拠とする人権制限を認める条項を依然として定めているからである(第12条および第13条)。
さらに悪いことに、統一教会の解散を求めるために政府が依拠した法律条項は、「公共の福祉」の侵害を明文で規定している(宗教法人法第81条1項)。
その後の展開 ― 仕組まれた不法行為訴訟の急増
日本政府からお墨付きを得て行われた30年以上にわたる統一教会信者に対するディプログラミングの結果、ディプログラマーと反カルトの弁護士組織によって棄教させられ、説得された元信者らが、教会を相手取って起こした不法行為訴訟が雪崩のように起きた。
この組織は、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下「全国弁連」という)と名付けられ、社会党や共産党に近い運動であり、統一教会が公然と共産主義と戦っていた時代に、統一教会と戦うために1987年に設立された。
実は全国弁連は、旧統一教会の友好団体である国際勝共連合(IFVOC)が当時推進していたスパイ防止法の制定を阻止するために作られたものだった。当時、全国弁連の主要メンバーだった山口広弁護士は、その発足式で「霊感商法で得た金が、統一教会と勝共連合のスパイ防止法制定運動の資金として使われている」と発言した。これらの弁護士は、教会が「霊感商法」で得た金が、共産主義と戦うために使われていると主張した。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、消費者法にヒントを得て、かつて教会の信者の一部が(主に彼ら自身の私的企業によって)行っていた商法を指し示している名称だ。彼らは印鑑、彫像、壺、ミニチュアの仏塔などを、本来の価値よりかなり高い値段で販売していたが、こうした慣行はカトリック教会などの一部の伝統的宗教にも見られる。
全国弁連は、統一教会とその活動を支援するために行われた寄付に対しても「霊感商法」というレッテルを貼った。地獄と救済の概念はほとんどの宗教に共通する信仰であるにもかかわらず、彼らは、統一教会は永遠の救済を「販売」し、信者に不安を抱かせて寄付を獲得していると主張した。
「霊感商法」は反カルト活動家が作った言葉で、宗教的マイノリティへの寄付を消費者法の問題とみなし、詐欺的な商法として寄付者への返金請求を可能にするものである。この用語は、他の国の反カルト運動によっても使われており、例えばドイツでは1997年に、反カルト団体が「人生の困難を克服することを助ける商業サービス」(「人生支援」)と呼ぶ行為を規制する法案が提出され、この法案は反カルト協会によって「サイコ契約法」と呼ばれた。
1997 年夏、ドイツのルーテル教会とカトリック教会の代表は、国会の上院である連邦参議院に共同声明を送り、法案の厳しい制限が彼らの教会にも適用され、特に彼らが提供する精神的なカウンセリング・サービスへの報酬にも適用され得ることに対する懸念を表明した。その後、法案は廃案になった。
全国弁連の弁護士らは、統一教会への寄付は、こうした信仰に基づいて「不安を煽り」、寄付者の「自由意志」を奪うことで得られたものと推認すべきだと日本の裁判所を説得することに成功した。

全国弁連の弁護士らは消費者法に基づく論法で、寄付金を集める教会員の信仰を無視し、彼らの動機はもっぱら営利であると主張している。彼らが告白する信仰は、信者を騙すための隠れ蓑にすぎないとみなされるべきだと弁護士らは主張している。
監禁され強制的に棄教を強要された元信者は、ひとたび棄教すれば全員が、不法な寄付金勧誘や布教活動を理由に教会を訴えて損害賠償を獲得するため、ディプログラマーや家族によって全国弁連の弁護士を紹介される。
社会学を専攻した有名なフリージャーナリストの福田ますみ氏は、この現象全体を徹底的に調査し、数多くの「ディプログラミングを受けた」信者にインタビューした。その後、彼女は調査結果を記した意見書を政府に送り、解散請求を取り下げるよう求めた。
彼女は、日本には身体的暴力や欺罔によって拉致され、アパートやその他の場所に長期間監禁され、信仰を棄てるまで解放されなかった信者が4,300人以上いるという数字を挙げた。
彼女は、不法行為を主張する原告のほとんどが、そのような過程を通過して、損害賠償請求訴訟を起こすことによって、本気で教会を脱退する意志を証明しなければならなかった信者たちであると結論づけた。
彼女はディプログラミングのプロセスと、それに続く不法行為に基づく民事訴訟について以下のように詳しく説明した。「日本における17世紀の切支丹迫害では、彼らの命を救うには当局に対して自分はキリスト教の信仰を棄てたと告げるだけでは不十分でした。彼らはもはや切支丹ではないことを証明するために、イエスの絵を踏むことを求められたのです。同様に、ディプログラムされた信者たちも、彼らがもはや統一教会の信者ではないと告げるだけでは不十分でした。彼らは自分が「霊感商法の被害者」であったと主張し、購入した大理石壺や多宝塔、印鑑などの物品の代金の返還を教団に要求する訴訟を起こすことによって、彼らが本当に教会を離れたことを証明しなければならないのです。」
彼女はまた、反統一教会の弁護士連絡会がディプログラミングの問題に深く関与しており、最終的に信仰を棄てることに同意した人々は皆、教会を訴えるために組織的に彼らに紹介されていたと指摘した。
彼女は以下のように書いている:「全国弁連もこの拉致監禁に深く関与しています。元信者が、教団に対して行う訴訟を優先的に担当するからです。弁護士たちはこれで潤いますし、脱会屋やキリスト教の牧師たちも、元信者の親族から謝礼と称して、かなり多額の金品を受け取ります。」

実際、連絡会の弁護士は、ディプログラミングを通じて親族を棄教させるよう家族に助言するなど、ときには最初からこのプロセスに関与することもあった。「弁護士たちは信者の親から相談を受けると,まず脱会屋を紹介し,拉致監禁により脱会に成功すると、今度は脱会屋から元信者を引き継いで原告に仕立て上げて訴訟を起こすのです。紀藤弁護士や有田芳生氏、鈴木エイト氏ら反統一教会陣営は、いまだにこの信者に対する拉致監禁を『保護説得』であると強弁しています。」
政府が教会の解散を請求する上で依拠した不法行為訴訟の一つでは、原告3人が家族に拉致監禁され、本当のキリスト教の教えは統一教会とは異なると「説得」しようとしたプロテスタント牧師2人によるディプログラミングの対象となった(神戸地方裁判所、2001年4月10日判決、事件番号9。同裁判所は請求を棄却したが、大阪高等裁判所は2003年5月21日に地裁判決を破棄し、原告に損害賠償を認めた)。
彼らは「詐欺的かつ洗脳的な伝道」を根拠に損害賠償を請求していた。ディプログラミングの後、原告らは教会の教義が無意味であると信じるようになり、教会を離れることを決意した。
2人のディプログラマーのうちの1人である高澤守牧師は、口頭弁論中に尋問と反対尋問を受け、次のように述べた(神戸地方裁判所、証人調書、1996年3月26日、81ページ)。
「Q:証人がいままでやってこられた救出活動に対して被告統一協会のほうがあれは拉致監禁であるというふうに非難していることはご存じですね。
A:はい、知っております。
Q:そういう非難に対してはどのようにお考えでしょうか?
A:これはやっぱり拉致監禁ではなくて、親御さんが一緒なわけですからあくまでも保護と心得ております。」
彼は続けて述べている:
「Q: 拘束しだしたのはいつごろからですか。
A: いま申し上げましたように、10年ぐらい前からだと思いますが。それは私だけではなくて、全国的なそういった救出に携わってくださってる牧師さんたちの大体統一した、そういうことだと思います。」(神戸地方裁判所、1996年5月21日証人調書25ページ)。

その後、このディプログラマーは、この行為が通常は違法であることを知っていたものの、次の理由により継続するつもりであったことを法廷で認めた(神戸地方裁判所、1996年3月26日証人調書、81~82ページ)。
「Q:ただ、救出活動を受けなくても自然脱会したり、それから統一協会から離れていったりというような人はいるんでしょう?
A:もうしっかり統一協会の信仰を持たれた方は、自然脱会ということは私は不可能だと思います。」
まさに、統一教会信者の揺るぎない信仰を打ち砕くためにディプログラミングの技法が創出され、政府の庇護の下で、「全国的な」家族による活動へと発展したのである。
信者が篤実な信仰と強い信念を有していたという事実が持つ意義を無力化するために、不当な影響力または「洗脳的伝道」の理論が捏造されたのであり、これが親たちにこの種の「保護」を実践するよう助言した全国弁連の弁護士たちが提起したすべての不法行為の申し立てを基礎づけている。
問題は、これらの弁護士が国際人権法に違反する行為に関与したと思われ、現在に至るまでそのような行為を推奨しているという事実はさておいても、彼らが長年にわたり日本の裁判所から一連の不法行為判決を獲得することに成功し、それが教会に対する解散請求に利用されたことである。
日本の裁判所は、原告に献金を返還するよう命じる判決を正当化するために、彼らが献金したときには強い信仰を持っていたことをディプログラマーが説明するのを聞いた後でさえ、統一教会による「不当な影響力」の理論を支持してきた。
この「不当な影響力」を根拠に、裁判所は統一教会の活動を「違法」と判断したのであり、ディプログラマーらの証言を基にしたこうした判決は、政府の解散請求の根拠にされているのである。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a Master in Public Law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.


