BITTER WINTER

統一教会をめぐる司法の「独立性」と「適正手続」の侵害エグゼクティブ・サマリー

by | Jul 29, 2025 | Documents and Translations, Japanese

2025年6月30日に国連特別報告者に提出されたパトリシア・デュバル弁護士の報告書の要点

パトリシア・デュバル

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Members of the Unification Church protesting against the dissolution action in Nagoya, July 2024.
2024年、名古屋で信教の自由を訴え抗議する統一教会の信者たち。

このサマリーは、国連人権理事会の特別報告者らに提出された報告書の要点をまとめたものである。報告書では、日本における司法の独立性および公平性に関する自由権規約(ICCPR=市民的及び政治的権利に関する国際規約)第14条の侵害について懸念している。

本件は、「世界平和統一家庭連合」(旧称:統一教会、以下「家庭連合」または「統一教会」、「教会」)の信者たちによって提起されたものである。

東京地方裁判所は2025年3月25日、教会に対して宗教法人格の解散を命じる決定を下し、現在は東京高等裁判所にて抗告審が行われている。

この決定が抗告審で認められれば、これまで約60万の信者を支え、全国的に牧会サポートをしてきた法人は解散となる。そして、その不動産や資産、金銭を含むすべての財産が没収され、信者たちは信仰共同体から切り離され、支えを失うこととなる。また、多方面での活動を継続する経済的手段をも奪われることになる。

司法の「独立性」が欠如している決定的証拠として、政府は高裁の判断が下される前からすでに教会資産清算の準備を進めており、抗告審の結果を確信して行動している点が挙げられる。

宗教法人法第81条第1項では、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。」により、政府は裁判所に対してその宗教法人の解散命令を請求できるとされている。

しかし今回の解散命令の全てのプロセスは、複数の点において法の「適正手続」の原則を侵害している。

  • 第一に、宗教法人法の解釈が、解散を認めるために一夜にして変更されたこと。「法令違反」の定義に民事不法行為を含めるようになったことで、元信者による民事訴訟のみを根拠として統一教会の解散命令を出すことが可能となった。
  • この解散命令の根拠とされた民事判決は、「社会的相当性」に反する行為に基づくものであり、それが著しく「公共の福祉」を害するとされた。しかし、これらの概念はあまりにも曖昧であるため、恣意的かつ差別的な適用につながる危険性がある。国連自由権規約人権委員会は、日本が「公共の福祉」を理由に、宗教または信条の自由を制限することをやめるよう繰り返し勧告してきた。
国連自由権規約人権委員会の会合の様子。出典: X
国連自由権規約人権委員会の会合の様子。出典: X
  • これらの民事訴訟における原告の多くは、裁判所の認定にもある通り、「ディプログラミング」、すなわち拉致監禁強制棄教を受けていた。彼らは、教団から本当に離れたということを証明し監禁から解放されるため、無理やり民事訴訟を起こすことを強いられた。これは、当時の彼らの信仰がいかに深かったかを示し、むしろ彼らの訴えの信頼性を損なうこととなっている。
  • 教会側が提出した、原告が当時信仰をもっていたことを示す証拠は、「マインド・コントロール」という科学的根拠がなく、すでに正しくないと結果が出ている理論によってすべて退けられた。さらに、時効の適用すら否定された。原告は反統一教会の弁護士に会うまで、マインド・コントロール下にあったと見なされ、古い過去の事実までもが教会に不利な証拠として認められた。また、近年は教会に対する訴えがなかったことが裁判所で認められたのにも関わらず、同じ理論が解散決定において用いられた。そして訴えを起こしていない想定上の被害者までもが含まれ、被害者は今なお不当な影響下にあるとし、被害者の数や「公共の福祉」への「害」までも不当に水増しされた。
  • 宗教法人解散の手続きは「非訟事件」とされているため、審理は非公開で行われる。結果として、証言の捏造が可能となり、公正な公開審理を受ける権利が侵害された。
著名な反統一教会弁護士、紀藤正樹氏(左)と山口広氏(右)。スクリーンショット
著名な反統一教会弁護士、紀藤正樹氏(左)と山口広氏(右)。スクリーンショット

結論:

政治的な動機をもつ反統一教会弁護士グループ(全国弁連)による、執拗なレッテル貼りキャンペーン(司法への圧力と、政府へのロビー活動)によって、統一教会およびその信者たちは、日本の国内裁判所において自らの声を届けることも、正当な裁きを受けることもできない状況に置かれている。

東京高裁での審理が始まる前にもかかわらず、まるで宗教法人の解散がすでに決定されているかのように、政府はすでに教団の資産を清算するための準備を進めている。2024年6月27日には、文化庁が「旧統一教会の被害者救済を見据えた財産精算手続き指針」の骨子案を発表した。

この骨子案の概要では、「すぐに被害を申し出ることが難しい場合もある」ことから、清算人が能動的に手続きを進めていくべきと示されている。

被害者の存在が確認されていないにもかかわらず、元信者がいまだマインド・コントロール下にあるという、曖昧かつ恣意的な理論に基づき、文化庁は清算人を通じて、元信者に対して金銭的請求を申し立てるよう呼びかける電話や、公告を準備している。これは、統一教会から全資産を確実に没収するためである。

文化庁は、この秋にも指針を策定する予定であり、ちょうどその時期に、高裁での審理が行われる見通しである。

すべては、統一教会の法人格の「計画的抹殺」と言っても過言ではない。これは、日本が国際人権規約に基づいて負っている義務、そして日本憲法に明記された司法の独立という原則に対する深刻な違反である。

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