BITTER WINTER

統一教会をめぐる司法の「独立性」と「適正手続」の侵害1. 自由権規約(ICCPR)第14条の無視

by | Jul 10, 2025 | Documents and Translations, Japanese

統一教会に対する解散請求裁判は、複数の点で法の「適正手続」の原則を踏みにじっている。

パトリシア・デュバル

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※本稿は、2025年6月30日に国連の関係特別報告者に提出された報告書を掲載したものであり、一部は「Bitter Winter」に掲載されたディプログラミングに関する連載記事を再構成したものです。

Japanese Unification Church believers calling for the respect of their freedom of religion or belief, Ibaragi, 2024.
信教の自由の尊重を訴える日本の統一教会信者たち(2024年、茨城県)

本報告書は、日本における司法の独立性と公平性の義務に関する自由権規約(ICCPR)第14条の違反について取り上げるものである。

本件は、世界平和統一家庭連合(旧称:統一教会、以下「家庭連合」または「統一教会」、「教会」)の信者たちによって提起されたものである。

2025年3月25日、東京地方裁判所は教会に対して宗教法人の解散を命じる決定を下し、現在は東京高等裁判所にて抗告審が行われている。

この決定が高裁で認められれば、これまで約60万の信者を支え、全国的に牧会サポートをしてきた法人は解散となる。そして、その不動産や資産、金銭を含むすべての財産が没収され、信者たちは信仰共同体から切り離され、支えを失うこととなる。

司法の「独立性」が欠如している決定的証拠として、政府は高裁の判断が下される前からすでに教会資産清算の準備を進めており、抗告審の結果を確信して行動している点が挙げられる。

また、この解散命令の全てのプロセスは、複数の点において法の「適正手続」(適正手続とは、行政活動の内容が正しいだけでなく、その手続きも適正でなければならないという原則)を侵害している。

第一に、宗教法人法の解釈が、解散を認めるために一夜にして変更されたこと。「法令違反」の定義に民事不法行為を含めるようになったことで、元信者による民事訴訟のみを根拠として統一教会の解散命令を出すことが可能となった。

この解散命令の根拠とされた民事判決は、「社会的相当性」に反する行為に基づくものであり、それが著しく「公共の福祉」を害するとされた。しかし、これらの概念はあまりにも曖昧であるため、恣意的かつ差別的な適用につながる危険性がある。国連自由権規約人権委員会は、日本が「公共の福祉」を理由に、宗教または信条の自由を制限することをやめるよう繰り返し勧告してきた。

東京地方裁判所の外観。Credits
東京地方裁判所の外観。Credits

これらの民事訴訟における原告の多くは、裁判所の認定にもある通り、「ディプログラミング」、すなわち拉致監禁強制棄教を受けていた。彼らは、教団から本当に離れたということを証明し監禁から解放されるため、無理やり民事訴訟を起こすことを強いられた。これは、当時の彼らの信仰がいかに深かったかを示し、むしろ彼らの訴えの信頼性を損なうこととなっている。

しかし教会側が提出した当時の原告の信仰については、「マインド・コントロール」という科学的根拠がなく、すでに正しくないと結果が出ている理論が用いられた。さらに、時効の適用すら否定された。原告は反統一教会の弁護士に会うまで、マインド・コントロール下にあったと見なされ、古い過去の事実までもが教会に不利な証拠として認められた。また、近年は教会に対する訴えがなかったことが裁判所で認められたのにも関わらず、同じ理論が解散決定において用いられた。そして訴えを起こしていない想定上の被害者までもが含まれ、被害者は今なお不当な影響下にあるとし、被害者の数や「公共の福祉」への「害」までも不当に水増しされた。

加えて、宗教法人解散の手続きは「非訟事件」とされているため、審理は非公開で行われる。結果として、証言の捏造が可能となり、公正な公開審理を受ける権利が侵害された。

1987年、日本では急進的な左派政治思想をもつ弁護士グループが、統一教会を日本から排除することを目的として、弁護士ネットワークを結成した。この団体は「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)として知られ、当時、無神論的共産主義の拡大を、第二次世界大戦後のアジアにおける霊性への脅威と見なして反対していた統一教会を排除するという、明確な目的のもとに結成された。

全国弁連は、統一教会に対する積極的な攻撃を開始し、その一環として、暴力的な「ディプログラミング」(信者が「洗脳」されたとみなして強制脱会させる行為)を支援した。信者は「被害者」として証言を強要され、教会に対する損害賠償請求訴訟を起こすよう仕向けられた。

全国弁連の創設者の一人、山口広弁護士。スクリーンショット。
全国弁連の創設者の一人、山口広弁護士。スクリーンショット。

過去40年以上にわたり、日本統一教会の信者約4300人が、こうした暴力的な「救出」プロセスの対象となった。彼らは家族によって拉致監禁され、主にプロテスタント系の牧師である「ディプログラマー」による説得を強いられた。このプロセスには、統一教会の教義に対する厳しい批判や、嘘の犯罪報告が含まれていた。

こうした監禁と教化は、数か月から数年に及ぶこともあり、最終的に信者が信仰を放棄するまで続けられた。

このような活動は、国連自由権規約人権委員会が2014年8月に日本に対して、「締約国は,全ての人が宗教や信仰を持つ又は選ぶ自由を害されうる強制を受けない権利を保障するための実効的措置をとるべきである。」と勧告したことを受けて沈静化した。(文書番号:CCPR/C/JPN/CO/6)そしてその数か月後、2014年11月、後藤徹氏が12年に及ぶ違法な監禁と強制説得を受けた件について、家族および2名のディプログラマーを相手取って起こした民事訴訟において、東京高等裁判所は初めて多額の損害賠償を認めた。この判決はその後、最高裁でも支持された。

それ以前、全国弁連は数十年にわたり、こうした信仰破壊の手法を利用し、積極的に推奨してきた。彼らは、信者の「救出」と称する活動を専門とする牧師たちに親を紹介し、その牧師たちは信仰を失った信者たちを弁護士のもとへ送り返した。元信者たちは、自分の背教を証明し監禁から解放されるために、教会を訴えるよう強いられた。

1991年のある会合では、全国弁連の弁護士と日本基督教団(UCCJ)の牧師たち――牧師たちは信者の「救出」活動に着手し、統一教会を自分たちと相反する宗教運動と見なしていた――は、統一教会の「破壊」を共通の目的とし、ディプログラミングをうけた元信者による損害賠償請求の提訴によって、その目的を達成するということを宣言した(1991年11月16日付の日本基督教団機関紙『教団新報』に掲載された記事を参照)。

このような「組織的」な民事訴訟の結果、数年にわたり複数の不法行為判決が下された。そこでは、ディプログラミングを受けた後に原告役を演じさせられた者たちが、「マインド・コントロールされていた」と主張した。弁護士たちはこれらの判決を根拠に、政府に対して教団の解散命令を出すよう圧力をかけた。そして本年3月25日、東京地方裁判所はその請求を認めた。

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