弁護士たちは、「秘密の手紙」を通して、子どもが教会に関わっていることに一度も不満を訴えたことのない親たちに自ら接触し、ディプログラマーを雇うよう促した。
パトリシア・デュバル
7本の記事の6本目(1本目・2本目・3本目・4本目・5本目の記事を読む)
Read the original article in English.

全国弁連の弁護士たちは、「救出」という名の拉致監禁手段を用いる牧師であったからこそ、親たちを彼らに紹介していた。その証拠が、同弁護士ネットワークの中心人物の一人が親に送った、「秘密の手紙」である。
ジャーナリスト・米本和広氏は、これらの手紙を『渡辺博弁護士の秘密めいた手紙』、『渡辺弁護士はいまだ「監禁にいざなう手紙」作戦を続行中!』と題して、ネット上で公開している。
当時、東京の「霊感商法被害救済担当弁護士連絡会」(被害弁連)の事務局長を務め、全国弁連の一員でもあった渡辺博弁護士は、統一教会の信者の親の住所を突き止めた上で、彼らに手紙を送った。
最初の手紙は、2008年11月14日、ある女性信者の両親宛てに送られたものである。
この手紙には、次のような文言が含まれていた:
「○○(娘)さんが統一協会に所属したままでは、一生、自らの力では統一協会から脱出することは不可能です。今、○○さんのご両親が統一協会というカルト宗教の実態を理解し、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、○○さんの救出を検討することが必要です。」
さらに渡辺弁護士は、この手紙および「救出」のすべての手続きについて、計略と嘘を用いて秘密裏に行うよう、具体的な指示を出している。本人に奇襲をかけて強制的に「救出」を実行するために、信者本人との直接の接触は一切避けるようお願いしていた。
手紙の内容:
「なお、当職からこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において○○さんが統一協会の取り込まれたことを気付いたことを、絶対に○○さんには知らせないようにしてください。
ご両親から、○○さんに対し、この問題について問い詰めたりすることは絶対にやめてください。そのような行動を取れば、○○さんをますます統一協会の活動にのめり込ませることになり、また統一協会から救出することが非常に難しくなります。
至急、○○さんに気づかれることなく、当職宛にご連絡をいただきたいと思います。繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、○○さんに話すことは絶対にやめてください。
ご両親において、早急に統一協会の実態を認識され、○○さんを早期に救出していただきたいと思います。」
この手紙は、ある信者の両親に送られたものであったが、幸いにもその両親は、弁護士の指示に反して、娘にその内容を知らせた。そして2009年10月、彼女は渡辺博弁護士を東京弁護士会に懲戒請求した。しかし、この請求は却下された。
ジャーナリスト・米本和広氏は、この手紙を自身のブログで公開し、その内容について渡辺弁護士を厳しく批判した。また懲戒審査において、手紙の差出人である渡辺弁護士の代理人を務めたのが、全国弁連の中心人物である山口広弁護士であったこと、さらに山口氏に指名された約40名の弁護士たちも、強制脱会を扇動するこの手紙の作者、渡辺氏の弁護に加わっていたことを報じた。
その後、2011年2月22日、渡辺弁護士が別の男性信者の両親にも同じような手紙を送っていたことが明らかになった。
この件も、ジャーナリスト・米本氏は自身のブログで『渡辺弁護士はいまだ「監禁にいざなう手紙」作戦を続行中!』と題して報じた。その手紙にも、前回と同様「警告」と「勧告」が記されていた。
手紙の内容:
「このまま健さん(仮名)が統一協会に所属したままでは、一生、自らの力で統一協会から脱出することはほとんど不可能です。今、健さんのご両親が統一協会というカルト宗教の実態を理解し、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、健さんの救出を検討することが必要です。」

そしてこの手紙にも同じく、秘密保持のお願いが記されていた:
「なお、当職からこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において健さんが統一協会の取り込まれたことに気付いたことを、絶対健さんには知らせないようにしてください。
ご両親から健さんに対し、この問題について問い詰めたりすることは絶対にやめてください。そのような行動を取れば、健さんをますます統一協会の活動にのめり込ませることとなり、また統一協会から救出することが非常に難しくなります。
至急、健さんに気づかれることなく、当職宛にご連絡をいただきたいと思います。
繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、健さんに話すことは絶対にやめてください。
ご両親において、早急に統一協会の実態を認識され、健さんを早期に救出していただきたいと思います。敬白」
これらの手紙は、全国弁連の弁護士たちが、信者に暴力的なディプログラミングをするため、その親を牧師に紹介しただけでなく、信者をその罠にはめるために、嘘と策略の使用まで、勧めていたことを裏付けている。
特筆すべきは、この手紙が健さんの両親に届けられた経緯である。米本氏が報じた両親の証言によれば、この手紙を届けたのは、反カルト運動家として有名な鈴木エイト氏であった。この事実が明らかになったのは、鈴木氏が手紙を届ける際に、自身の名刺を両親に手渡したからである。その名刺には「ANTI CULT ACTIVIST エイト」と記されていた。

渡辺弁護士の手紙には、「ある人物」から、健さんが統一教会の信者であることを知らされたと記されている。そしてその「ある人物」が、健さんの両親の住む埼玉市の自宅に、直接手紙を届けたのだった。
つまり、反カルト運動家やディプログラマー自身が、何の不満も訴えていなかった信者の親の名前を、全国弁連の弁護士に伝えていたのである。一方、弁護士側は、「忠誠心を試すテスト」(2本目の記事参照)を通して、信者の名簿を集めていた。これは「救出活動」の一環として、信仰を棄てたと主張する信者に対し、統一教会で関わりのあった全ての人物の名前を書き出させるというものだった。
このようにして全国弁連の弁護士たちは、ディプログラマーに「クライアント」を紹介するための準備を事前に整え、「被害者」をでっち上げ、教団を破壊するという彼らの目標を達成するために動くことができたのである。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a degree in public law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.



