1990年、故・川崎経子牧師は、信者に対して暴力の使用を公然と扇動する、脱会説得マニュアルを出版した。
パトリシア・デュバル
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1990年、日本基督教団の牧師が、「救出」のためのマニュアル(以下、手引書)を出版し、脱会説得の詳細を明らかにした。
日本基督教団・谷村教会の川崎経子牧師(1929–2012)は、1990年4月に教文館から出版された『統一協会の素顔:その洗脳の実態と対策』という書籍を執筆した。この中で彼女は、統一教会の信者に対する「救出」活動を推奨し、その方法を指南している。
教文館は、日本における最大かつ最も影響力のあるキリスト教専門出版社とされている。1887年創業という長い歴史を持ち、キリスト教書籍を専門とする出版社の中では、その出版物の幅広さと事業規模の点で際立っている。東京には大規模な書店も構えており、神学的資料の中心的拠点として、日本で最も著名なキリスト教出版社といえる。
この「手引書」は、教文館から一般書として出版され、一般の読者でも購入できる形で流通していた。
特筆すべきは、この「手引書」は露骨なマニュアルとしてではなく、「ある母親とその脱会した娘の体験談」という体裁で書かれていた点である。その内容は、家族が信者となった親族をどう「救出」すべきかについて、具体的な助言を与えるものだった。
この本では、母娘の証言を通して、以下のようなことが推奨されていた:
- 親は、仕事を辞めてでも「退かぬ覚悟」で、子どもを教会から脱会させるよう努力すべきである(p.41)。
- 信者を監禁する際は、親族などと綿密に計画を立てること(p.32)。
- 信者が銭湯などに行くタイミングを狙って待ち伏せし(p.33)、複数人で襲いかかり、口をふさぎ、車に押し込んで腕を拘束して搬送する(p.12–13)。
- 拉致に使用する車とは別に、先導車も用意しておくこと(p.13)。
- 移動中は、本当の目的地は言わず、嘘をついて信者をだますようにする(p.13–14)。
- 逃げ出すことが難しいような場所、たとえば民宿などを監禁場所に選ぶ(p.33)(p.16)。
- 監禁中は、逃亡を防ぐため複数人で見張ること(p.16)。
- 監禁当初、信者は心理的ストレスから激しく取り乱したり暴れたりすることがあるため、親族の協力を得て身体を拘束する(p.15)。信者が「家に帰りたい、気分が悪い」と訴えても、決して解放してはならない(p.34)。
- 監禁場所には、統一教会批判ができる専門の牧師を呼び、信者に対して説得を行わせる(p.17–20)。
- 信者が「これは人権侵害だ」と主張して牧師との対話を拒んだ場合は、足を縛るなどして無理やり言うことを聞かせる(p.35)。
- 信者が逃げられないことを悟ると、脱会したふりをする場合がある。たとえ牧師の話を素直に聞いているように見えても、だまされてはならない(p.16–18)。
- 時には、他の統一教会信者が監禁されている信者を心配して捜しに来ることがある(p.21)が、地域住民の協力を得れば簡単に追い返せる(p.38)。
- 信者が川崎牧師のもとに連れてこられれば、脱会を装っているかどうかを見抜くことができ、真に脱会させることが可能である(p.22–27)。
- 脱会こそが信者にとっての幸せへの道である以上、親は必要とあれば子どもの足を折ってでも脱会させるという覚悟で、脱会説得に臨むべきである(p.29)。
- 信者が監禁中にどれだけ苦しもうとも、最後まで根気強く脱会説得を続ければ、最終的には感謝の言葉を述べるようになる(p.28–29)。

この「手引書」はその後、横浜地方裁判所での訴訟に提出された。この訴訟は、牧師による脱会説得が失敗に終わった統一教会信者らが、日本基督教団の牧師を訴えたものであった。この裁判で牧師側の弁護を務めたのは、全国弁連の弁護士、山口広、渡邉博、紀藤正樹であった。
信者側の弁護士は、この手引書の「救出」に関する助言が記された部分のみを証拠として提出した。これに対し、全国弁連の弁護士は、手引書の著者による統一教会批判の部分を強調する目的で、書籍全体を証拠として提出した。
つまり、この「手引書」は単に公に出版されただけでなく、全国弁連の弁護士たちによって実際に法廷で使用されたということになる。彼らはこの本の存在と、その中に含まれる手引きの内容をよく理解していた。

さらに、全国弁連の弁護士たちは、最初から親たちをディプログラマーに紹介することで「救出」活動に関与しており、信者の脱会を強制するために暴力的な手段が用いられることを完全に承知していた。
この事実は、山口弁護士や、脱会説得を行った牧師たちの、法廷での証言によって裏付けられている。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a degree in public law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.



