信用を失った科学的根拠のない理論に依拠し、日本弁護士連合会は、悪評高いフランスの反セクト法を模倣するよう、国会に要請した。
パトリシア・デュバル
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2025年2月25日、日本弁護士連合会(以下「日弁連」)は、「旧統一教会問題等に関する実効的な被害の救済と予防のための勉強会」を国会内で開催した。
この勉強会では、旧統一教会の解散を前提として、その資産分配を円滑に進めるための現行法見直しの提案とは別に、「マインド・コントロール対策」として以下のような提案がなされた。
- 自由意思の侵害に関する法の新規制定
- 反カルト行政機関の創設
- 二世信者の脱会支援体制の整備
これらの提案は、2023年11月および12月に日弁連が公表した提言と意見書に基づいている。
その中で日弁連は、「カルト問題」の深刻さを強調し、今回の対策の理由を説明している。日弁連によれば、「霊感商法」が表面化したのは1975年頃で、旧統一教会に対してその損害賠償を求める動きは1987年に始まったという。
ちょうどこの時期から、「ディプログラミング」(拉致監禁・強制脱会)事件が発生し始め、強制的に脱会させられた元信者らによる損害賠償請求が相次ぐようになった。
1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件以降、2022年7月に発生した安倍晋三元首相銃撃事件は、日弁連にとって「旧統一教会」がもたらしたとされる被害について、メディア報道を通じて社会的関心を大きく喚起するきっかけとなった。
日弁連によれば、人々はマインド・コントロールの下で財産的被害を受けており、その影響は当該団体の信者本人だけでなく、その家族の生活にも深刻な影響を及ぼす可能性が明らかになったという。
その後、政府は「旧統一教会」に関連する問題を協議するために、関係省庁会議を開催し、有識者による調査研究が行われた。日弁連も招かれ、献金を行った本人が依然として被害に気づかず、親族との間にトラブルを引き起こしている事例が多数あるとの見解を示した。
そのため日弁連は、旧統一教会の現役信者もマインド・コントロール下にある潜在的被害者であり、「いまだ自らが被害者であることに気づいていない」とみなしている。また、「カルト」の問題は、そうした団体が活動への参加者に深刻な精神的または身体的依存状態を生じさせる点にあると付け加えた。
さらに、日弁連はフランスの反セクト法における「カルト的団体」という概念を取り入れたと説明した。この概念は、「そのような活動に参加する者に深刻な精神的・身体的依存状態を生じさせ、それを維持し、かつ利用する目的または効果をもって活動を行う団体」による不正行為だと、同法では指している。(2001年6月12日制定「アブ・ピカール法」)

日弁連はこうして、日本政府に対し、「カルト問題」との闘いにおけるフランス方式を導入するよう求めているのである。
しかし、宗教または信条の自由に関する国連特別報告者アスマ・ジャハンギール氏は、2005年9月18日から29日にかけてフランスを訪問した後の報告書において、次のように指摘している。
「87. とはいえ、『カルト』との闘いは、国際基準で保障されている宗教または信条の自由の権利に関わる問題を提起する。前述のアブ・ピカール法の採択後、欧州評議会(PACE)は2002年の決議1309において、『加盟国は公共秩序を守るために必要と考える措置を自由に講じることができるものの、欧州人権条約第9条(思想、良心および宗教の自由)、第10条(表現の自由)、第11条(集会および結社の自由)によって保障される自由への制限は、特定の条件に従う必要がある […]』と強調し、フランス政府に対しこの法律の再検討を求めた…」(E/CN.4/2006/5/Add.4、2006年3月8日)。
欧州評議会のこの決議や、国連特別報告者による批判にもかかわらず、日弁連は日本の国会において、似たような「反カルト」法の制定を推し進めている。
この提言は、日弁連が2023年12月14日に公表した「霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書」に基づいて行われたものである。
日弁連は、既に信用を失ったマインド・コントロール理論を根拠に、「個人が合理的に判断することができない事情があることを不当に利用した勧誘」を禁止する新法制定の必要性を国会に説明した。
宗教的選択において何が「合理的な判断」に当たるのかについては説明されなかったが、その勉強会のテーマからすれば、特に旧統一教会のように「カルト」というレッテルを貼られた少数派宗教への入会は、「判断力が損なわれた」結果とみなされていることは明らかであった。
日弁連によれば、人は、弱み、不安、恐怖、心配事、願望など脆弱な点につけ込まれると、必ずしも知識、経験、判断力に不足がない者であっても合理的な判断ができない状態となりうるという。
そのような状況は操作されやすく、心理的依存を生じさせ、本人は「運が開ける」と言われただけで金銭を寄附したり物品を購入したりするようになることがある。
さらに、「その唯一の救いの道として示されれば、教祖や教義に従うようにもなる。その状態が維持されることで、継続的な寄附をするようにもなる。このように、人の脆弱性につけ込む形でなされた不当な勧誘行為がなされると、自己の利益を確保するための防御能力や判断能力が充分に働かないままに不当な出捐を無批判に行うよう誘導されていくことになる」と説明されている。
これは、宗教指導者による「精神操作」の理論であり、また「カルト」というレッテルを貼られた少数派宗教にのみ典型的に適用されるものである。明らかに、伝統宗教には適用されることを想定していない。
このような曖昧で差別的な概念は、西側諸国の裁判所で退けられており、欧州人権裁判所も科学的根拠がないと認定している。(「エホバの証人モスクワ支部対ロシア」判決、2010年6月10日、§129)
これはフランスの「アブ・ピカール法」をそのままコピーしたものであり、この法律は「そのような活動に参加する者に深刻な精神的・身体的依存状態を生じさせ、それを利用する」ことを犯罪としている。

この法律は、欧州人権条約第9条に定められた思想、良心および宗教の自由の制限要件を満たしていないとして、国連特別報告者および欧州評議会から批判を受けた。
同様に、日本が署名し拘束を受けている国際人権規約第18条3項に定められた要件も満たしていない。

Patricia Duval is an attorney and a member of the Paris Bar. She has a degree in public law from La Sorbonne University, and specializes in international human rights law. She has defended the rights of minorities of religion or belief in domestic and international fora, and before international institutions such as the European Court of Human Rights, the Council of Europe, the Organization for Security and Co-operation in Europe, the European Union, and the United Nations. She has also published numerous scholarly articles on freedom of religion or belief.

