悪名高い反カルト記者に有利な一審判決は誤り。その理由をUPF代理人が語る
弁護士 中 山 達 樹

2023年、反カルト記者の鈴木エイト氏は、2022年に暗殺された安倍晋三元首相が、UPFインターナショナル主催のイベントで2021年に5分間のビデオメッセージを送った見返りとして、5,000万円の謝礼を受け取ったと繰り返し主張しました。
家庭連合(旧・統一教会)と関係を持つNGOのUPFインターナショナルの日本支部・UPF ジャパンは、この虚偽主張につき名誉毀損訴訟を提起しました。鈴木氏の主張は、UPF ジャパンがこの5,000万円を支払ったかのような誤った印象を与え、社会的評価を低下させられたと主張したのです。
しかし、この5,000万円の授受を裏付ける証拠を鈴木氏が一切提示しなかったにもかかわらず、2025年5月、UPF ジャパンは東京地裁で敗訴しました。私は、UPF ジャパンの控訴審の代理人として、この事件が安倍氏暗殺後の家庭連合をめぐるメディア環境全体をよく反映していると考えています。
2022年7月の安倍元首相暗殺直後、鈴木氏は安倍氏と家庭連合との「裏取引」疑惑をX(旧Twitter)で強調し、以下の投稿をしました。
「統一教会と安倍晋三元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません。私のアカウントをフォローし、ツィートをリツィートしてください。そして私を押し上げてください。」
この挑発的な発言により、鈴木氏はメディアに注目され、家庭連合批判の象徴的な存在となりました。彼の主張は、教団解散を目指す政府・裁判所の動きにつながりました。
しかし、鈴木氏の主張は全くの捏造でした。「裏取引」も「ズブズブの関係」も、そして「明確な論拠」も存在しません。この名誉毀損訴訟の控訴審は、鈴木氏の根拠なき発言がUPF ジャパンや家庭連合に与えた被害を問い直す意義を持っています。
鈴木氏は、家庭連合やUPF ジャパンと政府の関係を「裏取引」と何度も表現しました。この言葉は広辞苑で「隠れて行う不正な取引」を意味し、犯罪や反社会的行為を想起させます。
また「ズブズブ」という言葉も、過度に馴れ合って不当に深く結ばれた関係を示唆し、やはり不正・非倫理的な関係を連想させます。
こうした言葉を用いることで、鈴木氏はUPF ジャパンや関連団体が政界と秘密裏に癒着しているかのように印象づけました。これは事実無根であり、名誉毀損です。
東京地裁は、安倍氏への金銭支払は「家庭連合またはUPFインターナショナルが行った」と結論づけ、UPF ジャパンの関与を否定しました。
この論理は誤りです。安倍氏のビデオメッセージを正式に依頼したのはUPF ジャパンです。依頼した者が支払者と推定されるのが自然であり、UPF ジャパンを除外する理由はありません。

我々は、これを裏づけるべく控訴審で大量の証拠を提出しました。鈴木氏は名誉毀損発言前に計24回、公然と「UPF ジャパン議長の梶栗正義氏が安倍氏にビデオメッセージを依頼した」と述べ、メディアもこれを10回報じました。合計34回、鈴木氏の最初の発言前に、平均して11日に一度も言及されていたのです。
したがって、鈴木氏の発言を聞いた者が、5,000万円を支払ったのはUPF ジャパンだと推測するのは極めて自然です。
また、東京地裁は、「裏取引」「ズブズブ」発言が7か月以上前のものだとして、UPF ジャパンの名誉毀損を認めませんでした。
しかし我々は、鈴木氏が繰り返した「裏取引」「ズブズブ」発言が広く流布していた証拠を控訴審で多く提出しました。鈴木氏自身が123回、メディアが61回、合計184回も言及しており、安倍事件後は平均して2.7日に一度取り上げられていました。
この執拗な繰り返しによって世論が形成され、UPF ジャパンと政府の間に違法な結びつきがあるかのように人々は信じてしまいました。
この文脈で「安倍氏が5分間のビデオで5,000万円を受け取った」という主張を聞けば、通常の謝礼とは解釈されず、不正な取引と受け止められます。5分間のビデオの対価としては報酬が異常に高額だからです。
つまり:
– 5,000万円の報酬は、強い違法の匂いがする
– 50万円程度なら、そのような疑念は生じない
といえます。
このように、鈴木氏の発言はUPF ジャパンを誹謗・中傷するものです。鈴木氏は東京地裁で何一つ証拠を示せなかった以上、控訴審で新たな証拠を出すこともないでしょう。
この事件は、鈴木氏が作り出した虚構の物語が、家庭連合に対するメディア攻撃を煽り、扇情的な方法で不当な非難を拡大させたことを象徴しています。
この控訴審の期日は9月下旬に開かれ、判決は早ければ年末に出される見込みです。

Tatsuki Nakayama graduated from the Faculty of Law at the University of Tokyo in 1998. He was admitted as a lawyer in 2005 and graduated from the National University of Singapore Law School in 2010. After working as an international lawyer at a Singapore law firm, he opened Nakayama & Partners in 2015. After studying as a certified fraud examiner in 2016, at Lee Kuan Yew School of Public Policy, and Singularity University, he became a business ethics expert in 2022. He has held executive positions and other important positions in the Inter-Pacific Bar Association, which includes 1,500 lawyers worldwide. His major works are “Global Governance and Compliance” and “Integrity” (both published by Chuokeizaisha), and his recent books include “English Negotiation Techniques” (Heisei Publishing).


