なぜキリスト教の反カルト主義者は、日本の左翼弁護士や宗教を迫害する無神論政権と協力しているのか?
マッシモ・イントロヴィニエ
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反カルト運動をめぐる政治は、非常に複雑で、時に混乱を招き、そして極めて矛盾に満ちている。初めの頃は、現代の反カルト運動は主に世俗的なヒューマニストによって主導されていた。フランスの反カルト団体CCMMを設立したロジェ・イコールは、「カルトと宗教の間に根本的な違いは実際にはなく、程度と範囲の違いがあるだけだ…もし私たちに任せられるなら、カルトと大規模宗教に関するこうしたナンセンスな議論に終止符を打つだろう」と説明した。彼はまた、「ムハンマド、キリスト、モーセ」といった人物が、今日の「カルト」指導者の先駆者であるとも述べている(”Les sectes et la liberte(セクトと自由)”, “Les Cahiers rationalistes”, 364、1980年、p.76-8)。
国際的な反カルト運動の著名な人物であるカナダの社会学者スティーブン・ケントは、聖書の預言者エゼキエル、使徒パウロ、ムハンマドといった歴史上の宗教指導者のほとんどが、統合失調症やてんかんといった症状を経験していた可能性があると示唆している。さらにケントは、物質世界を超えた霊や力を信じ、神の助けを祈る人々は、彼が「呪術的」と呼ぶ信仰を抱いており、それが精神衛生上の問題と関連している可能性があると指摘している。ケントは、多くの宗教、たとえ最大規模の宗教であっても、精神疾患を抱えた人々によって創設された可能性があると結論付けている(”Psychobiographies and Godly Visions: Disordered Minds and the Origins of Religiosity(精神伝記と神の幻:混乱した心と宗教性の起源”、Palgrave Macmillan、2025年、p.64, 60, 258)。
しかし、これらの世俗的ヒューマニストたちは、奇跡、涙を流すイコン、そして母なるロシアの神聖性を固く信じるロシア正教会の指導者たちとの協力に反対はしなかった。同性婚といった問題では意見が異なっていたものの、共通の敵である「カルト」に対抗するためには、こうした違いを脇に置いて団結する用意があった。ウクライナ戦争によって状況が変化するまでは、国際反カルト組織FECRISは、イコールの後継者であるフランスの世俗主義者とロシア正教会関係者との緊密な協力関係に基づいて活動していた。
フランスの世俗主義者はリベラルな見解を持ち、ロシア正教会は非常に宗教的である。しかし、彼らは中国の全体主義的で公式に無神論を掲げる政府とも関わり、中国で講演を行ったり、中国政府高官を会議に招いたりした。これらすべては「敵の敵は味方」という考えに基づいていた。これは現実的には、中国の強力な反宗教機関や、プーチンを後ろ盾とするロシア正教会が宗教的独占をライバルから守る取り組みなどによって、西側の民間反カルト団体が容易に操られ得ることを意味していた。
学者たちによって取り上げられることは少ないものの、このプロセスはアジアで数十年にわたって続いてきた。日本と同様、韓国でも根本主義キリスト教の反カルト主義者(理論上は共産主義に反対すべき)、リベラル派教会の一部のキリスト教徒、左派知識人、そして中国の間で、意外な連携が見られる。弁護士パトリシア・デュバルは、日本において社会主義および共産主義の弁護士がプロテスタント牧師(一部はディプログラマーとして活動)と協力し、統一教会の解散という目標のもとに結束し、連携していたことを記録している。統一教会を解散に追い込んだキャンペーンのキープレイヤーは日本共産党だった。さらに、中国共産党の傘下にある世界最大の反カルト団体、中国反邪教協会は、日本の統一教会を解散させるキャンペーンを公式に支持した。
2023年、ジン・ヨンシク牧師率いる韓国の団体「世界反異端協会」が世界ツアーに乗り出し、スペイン、ドイツ、モンゴルなどで講演を行った。彼らは韓国の「カルト」を批判しただけでなく、全能神教会(CAG)や法輪功といった団体に対する中国による弾圧を公然と支持した。これらの団体は主に韓国に逃れてきた中国人で構成されており、規模は小さく、地元の根本主義教会にとって脅威となることはほとんどない。根本主義の牧師たちがこれらの団体に対抗するために多大な資源を投入しているという事実は、中国との密接な関係を示唆している。北京の情報機関と関係があると思われる中国のウェブサイトは、この協会のツアーを定期的に報道し、宣伝している。

ヨーロッパでジン牧師の講演会を企画した現地プロテスタント教会は、彼がディプログラマーとして活動し、韓国の最高裁から暴力的なディプログラミングに関与したとして有罪判決を受けていることを知らなかったかもしれない。2020年、人権活動家ウィリー・フォートレは学術研究で次のように記している。「2007年、ジン・ヨンシク牧師は神様の教会世界福音宣教協会の信者を精神病院に送ったとして起訴され、有罪判決を受けた。2008年10月24日の”Newshankuku“に掲載された報道によると、彼は強制棄教の罪で懲役10カ月、執行猶予2年の判決を受けた。2012年、人権活動家に対するジン牧師の告訴に関する調査で、彼が棄教事業で10億ウォン(85万ユーロ)以上を稼いでいたことが明らかになり、世論の激しい反発を招いた。」
ディプログラマー牧師であるジン氏の団体は、日本の反カルト活動家とも強固な関係を築いていた。その中には、仲間であるキリスト教のディプログラマーだけでなく、世俗的で左寄りの「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」も含まれていた。人権弁護士パトリシア・デュバル氏が2025年8月に行った韓国への事実調査旅行の後に報告したように、2022年の安倍晋三元首相の暗殺の後に、ジン氏の団体は日本の反カルト活動家と共に、韓国で少なくとも3つのイベントを開催した。安倍首相暗殺から間もない2022年7月22日に、ソウルの韓国プレスセンターで記者会見が行われた。講演者の中には、全国弁連の弁護士である渡辺博(ZOOM参加)と、このシリーズの前回の記事で紹介した悪名高いディプログラマー牧師のオ・ミョンヒョン氏がいた。オ・ミョンヒョン氏は、井邑で新天地の女性信者が元夫に殺害された事件に関与していたが、その元夫は義理の妹も殺害していた。
2022年12月15日、ジン氏はソウルの韓国教会100周年記念館で別の会議を主宰した。この会議の目的は、フランス式の反カルト法を韓国で推進することであり、日本で導入された措置にも触発されていた。渡辺弁護士は再びビデオ会議で参加し、提案を強く支持した。そのときには有田芳生も出席していた。彼は当時、左派系の立憲民主党の元国会議員(2024年に議席を取り戻した)であり、反カルトの立場で知られていた。「芳生(ヨシフ)」という名前は日本では珍しいが、これは共産党員の両親がヨシフ・スターリンに敬意を表して有田に付けたものだ。(これは有田本人が述べている:「家」の履歴書、『週刊文春』、1999年3月11日発行145頁)。有田は、日本におけるディプログラミング活動の擁護者であり、統一教会員の医師である小出浩久氏が監禁されディプログラミングを受けている間に、彼に「インタビュー」を行った。
2025年5月13日にも、ジン氏はソウルで9名の日本人牧師およびディプログラマーらとともに記者会見を開き、その場で「韓国発の異端・似而非宗教団体対策に関する協力協定」を発表した。ディプログラマーのジン氏は、「韓国が日本の先例に倣う必要性が切実に求められています。(中略)韓国でも多くの人が異端の被害を受けていますが、日本とは異なり、韓国には似而非宗教を規制する法律が全くありません。そのような法律が切実に必要です」と強調した。ジン氏は、根本主義キリスト教徒が「異端」を排除できるよう支援する法律を制定するよう政府に要請するとともに、日本人牧師らが自身の国際反カルト団体に加盟すると発表した。
世界反異端協会の起源は、キリスト教異端相談所にまで遡る。この組織は1998年に韓国で設立され、後にキリスト教異端対策委員会と改名された。2012年からは、他国の福音派および根本主義派の牧師が招聘され、韓国の組織に世界反異端協会が加わった。2015年には、オーストラリアに支部が設立された。
世界反異端協会の会合には中国の代表者が参加し、またその逆も行われた。2007年、新宗教運動を研究する欧米の学者たちはまだ、中国当局との「カルト」に関する対話が可能であると期待していた。中には、深圳で開催された中国主催の「カルト」に関するシンポジウムに出席した者もいた。彼らは特に、「韓国の基督教異端・似而非研究対策協議会会長の李大福牧師が、各種の異端に対して45分間にわたる激しい非難演説をした」ことに心を痛めた。
中国共産党が韓国の反カルト活動を支援する主な理由は3つあった。第一に、韓国の一部メガチャーチや新宗教団体が中国で秘密裏に、しかし効果的な活動を開始していたこと。第二に、ソ連崩壊後、中国共産党は自らを世界有数の共産主義推進者とみなし、共産主義イデオロギーを徹底的に批判する統一教会のような宗教運動の活動を嫌悪していたこと。第三に、朝鮮海峡に位置する韓国最大の島である済州島への観光促進政策により、中国国民はビザなしでの訪問が可能になったこと。中国で「カルト」として迫害されている宗教団体のメンバーは、この政策を利用して観光客として済州島を訪れ、その後亡命を求めた。彼らは韓国滞在中にインタビューに応じ、ソーシャルメディアで中国による宗教弾圧について投稿した。北京政府は、韓国の反カルト活動家を利用して、これらの「偽難民」を「カルト信者」として中国に送還すべきだと主張し、抗議活動を展開させた。

オ・ミョンオク氏は、韓国の著名な反カルト活動家であり、雑誌「宗教と真実」を発行している。彼女は世界反異端協会の非公式代表として活動している。ソウルで全能神教会の難民に対する偽の抗議活動を組織するにあたり、彼女が中国工作員と密接な関係にあったことを「Bitter Winter」は報じている。オ・ミョンオク氏自身も中国の工作員である可能性がある。2024年6月14日付のローマ裁判所の判決では、彼女は中国の「特別工作員」とされている。
中国共産党は、世界反異端協会と、注目すべき、そしてやや異例の関係を築いている。この組織は特に進歩的とは言えない。ウェブサイトには、ローマ・カトリック教会が同性愛者に対して「敬意を払っている」と批判し、また世界最大の福音派指導者ネットワークであるローザンヌ世界福音化委員会を、同性愛に対する寛容さを理由に「異端」と非難していることが明記されている。オ・ミョンオク氏は、同性愛者、移民、イスラム教徒を公然と攻撃することで知られている。

これは根本主義的なキリスト教徒の間では珍しい立場ではないが、彼らのほとんどは反共産主義である。なぜ彼らは中国共産党とその諜報機関に協力するのだろうか?
韓国の牧師たちはどうなのだろうか? なぜ彼らは、中国の独立系家庭教会に属する福音派の仲間たちを投獄するような、無神論の共産主義政権を支持するのだろうか? 彼らの海外でのプロパガンダ・ツアーには、誰が資金提供しているのだろうか?
オ・ミョンオクのように、中国に勧誘されたり、賄賂を受け取ったりした人物もいるかもしれない。その他のケースに関しては、これもまた「敵の敵は味方」という格言を反映しているのだろう。韓国の反カルト根本主義者による統一教会やその他のキリスト教系新宗教団体に対する長年にわたる敵意は10年以上も続いており、共産主義や中国に対するいかなる批判をもはるかに凌駕している。
左翼知識人や政治家、既知・未知の中国工作員、そして根本主義プロテスタントの反カルト主義者たちが協力し、中国の利益に反するとみられている「カルト」や教会を標的にするという現在の韓国の状況は、リスクが大きい。不安定な東アジアと韓国の政治情勢において、反カルト対策は共産党の利益と北京政府に利益をもたらす可能性がある。文博士(韓鶴子総裁)の事例が示すように、こうした活動は宗教の自由に対する世界的な脅威を増大させる可能性を秘めている。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


