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日本における統一教会反対運動1. キリスト教の牧師と反対父母の会

by | Sep 9, 2025 | Documents and Translations, Japanese

統一教会を異端とみなす牧師と、自分の子供が洗脳されたとみなす親たちが初期の反対運動を形成した。

魚谷俊輔

Read the corresponding article in English.

3本の記事の1本目

The three anti-Unification-Church groups.
統一教会反対運動の三大要素

日本における統一教会反対運動は、大きく分けて三つの勢力からなっている。それらはキリスト教の牧師、反対父母の会、左翼勢力である。これら三つの勢力は、もともとお互いに接点がなく、それぞれバラバラに統一教会に反対してきたが、1980年代初頭より「統一教会潰し」という目的のもとに結束し、いまやスクラムを組み反対運動を展開している。(拙著『反証 櫻井義秀・中西尋子著「統一教会」』、世界日報社、2024年、p.564-565を参照). この三つについてこれから詳しく説明したい。初回の記事においては、キリスト教の牧師と「反対父母の会」について論じ、2本目の記事では左翼勢力について論じることにする。

1番目の勢力は、キリスト教の牧師たちである。彼らの反対の動機は、異端との闘争にある。彼らの視点からは統一教会は異端の信仰であるため、その信仰を棄てさせなければ救われないと考えている。日本において拉致監禁を伴う強制改宗(ディプログラミング)を最初に行ったのは、日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会の森山諭(もりやま・さとし)牧師であった。彼の教会はホーリネス運動の流れを汲み、日本福音同盟に加盟している。最初の監禁説得が行われたのは、1966年早春のことだった。

森山牧師は著書の中で、統一教会に反対する動機を、次のように説明している。

「彼らがキリスト教を名乗らなければ、問題にする必要もありません。しかし、彼らがキリスト教を名乗り、文鮮明を再臨のキリストに担ぎあげ、聖書をでたらめに解釈して人々を惑わすので、放っておけないのです。」(森山諭『現代日本におけるキリスト教の異端』、ニューライフ出版社、1981年、p.132)

森山牧師は1976年に八王子の大学セミナーハウスで「異端問題対策セミナー」を開催し、それまでの10年間の経験を元に、身体隔離を手段とした脱会説得法を他の福音派の牧師たちに伝授した。その後、強制改宗事件が増加するようになる。

森山牧師と彼が1976年に指導した牧師たち
森山牧師と彼が1976年に指導した牧師たち

森山牧師とその薫陶を受けた牧師たちは、聖書を文字通りに解釈する「福音派」のグループに属していたが、統一教会に反対する牧師たちは必ずしも福音派というわけではなく、自由主義神学を信奉する、日本基督教団の牧師たちもいる。その中にはキリスト者でありながら左翼的な思想を持つ人物もおり、一口に「反対牧師」と言っても、その神学的・思想的傾向は必ずしも同じではない。

日本基督教団はさまざまな教派が集まって成り立っている教団であり、世界でも数少ない合同教会の一つである。この日本基督教団に左翼思想を持つ人々が入り込むようになり、1980年代には教団執行部を乗っ取るようになった。これらの左翼思想を持つ人物たちは、毛沢東の「造反有理」の言葉にちなんで「造反派」と呼ばれる。その造反派の人物によって、1988年3月、反統一教会声明が出されたのである。(梶栗玄太郎編『日本収容所列島』、賢仁舎、2010年、p.183)

日本基督教団に属する反統一教会の牧師たち
日本基督教団に属する反統一教会の牧師たち

2番目の勢力は、「反対父母の会」であり、正式名称を「全国原理運動被害者父母の会」という。日本における初期統一教会の活動は「原理運動」と呼ばれていた。これは、CARP(大学連合原理研究会)という学生団体が大学で活動を広げ、学生たちの間で「原理」を信奉する運動として広く知られるようになったことに由来している。

統一教会に自分の息子・娘が入信した親たちの立場からは、我が子は統一教会にだまされているか、洗脳されているとしか考えられなかったので、「子供を返せ!」と叫びながら反対運動をするようになった。

統一教会に対する「反対父母の会」が結成されるようになった背景には、マスコミの報道がある。1967年7月7日付の朝日新聞夕刊に、「親泣かせの原理運動」という見出しの記事が掲載され、これによって不安をかきたてられた統一教会信者の親たちが、やがて「反対父母の会」につながって教育されるようになった。

1967年の朝日新聞記事「親泣かせの原理運動」
1967年の朝日新聞記事「親泣かせの原理運動」

「反対父母の会」の活動内容は、①統一教会に関する悪い情報を社会に宣伝する、②統一教会信者の父母に連絡を取り、統一教会に対する否定的な情報を提供する、③「保護」(実際には監禁)して脱会させなければ子供の人生が台なしになると親を説得する、④強制改宗を行う牧師や脱会屋を紹介する、などである。

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