統一教会の代理人弁護士の一人が、この事件で政府が用いた非倫理的な戦術について語る。
福本修也
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世界平和統一家庭連合(以下、「家庭連合」という。)に対する宗教法人解散命令申立事件において、文部科学省(以下、「文科省」という。)は、元信者等が作成した陳述書ないし証言調書を合計294名分提出した。但し、これら陳述書作成者の中には、信者の親族、文科省の役人や反対派弁護士など、元信者でない者が33名含まれていた。また、元信者261名に関しても、2世元信者8名を除いた253名のうちの約9割が15年以上前に入信した者達であり、50年以上前に入信した元信者や、何十年も前に脱会した元信者らが含まれていた。これらの者については、かつて家庭連合を被告として争われた裁判で裁判所に提出された陳述書や供述調書がそのまま提出されたのであった。
一方、家庭連合がコンプライアンス宣言を発した2009年以降に入会した1世信者は19名だけであり、このうち18名は、今回、文科省が聞き取り調査を行って陳述書を作成し、本人が署名捺印するという形で陳述書を作成し、解散命令申立事件に提出した(残り1名は、家庭連合を被告とする裁判を提起した原告であり、同裁判で原告が提出した陳述書を文科省が提出した)。
家庭連合は、古い陳述書や調書についてもその内容の虚偽性を指摘したが、解散命令申立事件で問題となるのは、現在解散事由が存在するか否かであった。そこで、上記18名の1世信者の陳述書の内容に対しては特に徹底した反論・反証を行った。その上で、2005年以降入会した元信者で、客観的な証拠からみて、陳述書の内容の虚偽が明らかで虚偽性が特に酷い元信者5名を選抜して証人尋問を申請した。ところが、文科省は、そのうち特に供述内容の虚偽の程度が酷い2名に対する証人採用について強硬に反対した。結局,裁判所の裁量によりW1、W2の2名の元信者女性の証人尋問が採用された。その結果、2024年12月9日にW1に対する尋問が行われ、また、同月12日にW2に対する尋問が行われた(上記2期日には,その外にも現役信者3名の尋問も行われた)。
彼女らに対する証人尋問の目的は、文科省が内容虚偽の陳述書を作成して家庭連合を陥れようとした事実を立証することであった。

1.W1に対する尋問
(1)W1の陳述書での供述内容
W1は1955年生まれの女性で2023年7月に陳述書を作成した当時67歳の元信者であった。W1の陳述書には以下の経緯が記されていた。
| 時期 | 出来事 |
| 2015年6月頃 | 家庭連合の信者から勧誘を受け家庭連合の教育施設で教義を学び始めた。 |
| 2015年8月 | 家系図を元に、どの先祖にどんな問題があるか説明を受けた。その他下記説明を受けた。 ・娘の鬱病等の精神病は先祖の怨念によるものであり,先祖の解怨をしなければならない ・酷い家系だ ・W1が母から虐待を受けたのも、離婚したのも家系のせい ・家系の救い主のW1が地獄で苦しむ先祖を救わなければならない ・地獄は何種類もあり多くの先祖が地獄で苦しんでいる ・先祖を救えばW1も家族も地獄に行かずに済む ・先祖を救えば因縁から解放されW1や娘が不幸から解放される ・地獄で先祖が牢屋で苦しんでいるので、献金を行って先祖を牢屋から救い出しましょう。 |
| 2015年8月~2018年9月 | 先祖解怨のため献金を繰り返した。 献金総額は4972万円 |
| 2019年9月 | 献金の返還を求めた結果600万円で和解した。 |
| 2022年7月 | 安倍元総理銃撃事件が勃発し、家庭連合に対する批判報道が行われたことから、弁護士を立てて更なる返金交渉を行った。家庭連合側は、献金総額は1119万円であると主張した。 |
| 2022年11月 | 岸田首相が国会質疑で、宗教団体が信者に対して献金返還を求めないとの念書を作成させた場合、献金勧誘行為の違法性認定要素となると答弁した。これを踏まえ、W1の弁護士は、先の和解(特に600万円以外の献金について返金を求めないとの合意)は無効だと主張した。 |
| 2022年12月 | 2400万円で和解が成立した。 |
W1の陳述書のメインとなる筋書きは、W1の娘が鬱病などの複数の精神病を患っており、これがW1の最大の悩みであって、「どうにかして娘の病気を改善させる方法はないか」と常々思っていたところ、家庭連合信者から、「娘の病気は先祖の怨念によるものであり、先祖の因縁が娘の精神病の原因である。先祖を救うことで因縁から解放され、あなたや娘が不幸から解き放たれる」などと言われて不安にあおられ、言われるままに献金したというものであった。
(2)W1の陳述書における供述の虚偽性
W1の陳述書における供述の虚偽性は以下の事実から明らかであった。
- 現役信者から聞き取り調査をしたところ、W1の娘が鬱病等の精神病を患ったなどという話は誰一人聞いたことがなかった。したがって、娘の病気の話を元に献金を迫るということ自体、あり得ないことであった。また、誰もW1に対して、先祖が地獄にいるから献金して先祖を解怨し、因縁を解かなければならないなどと言ってはいなかった。
- 2016年にW1が記した証文には、W1の娘が大手企業に勤務しており、上司からその能力を高く評価され、安倍元首相の中東訪問に際し、会社から特に抜擢されてプロジェクトに参加したとの記載があった。したがって、娘が鬱病等の精神病を患っていたとは考えられなかった。
- 2019年9月にW1が教会に対して献金の返金交渉を行った際、W1は以下の発言を行ったが、娘が鬱病等の精神病を患っていたとか、このことを元に献金するよう言われたとの話は一切なかった(録音データあり)。
・W1の娘は会社では新人教育を担当しており、無能な新人の教育が同人にとって非常にストレスであった。
・娘は毎日のように仲間と連れだって野球観戦に行ったり酒を飲み歩くなどし、部屋が酒の臭いで充満していた。
・娘の皮膚病(軽いアトピー性皮膚炎)が治ったり、素行が直ったり、態度が明るくなったり、見かけが良くなるということが少しも感じられなかったので、自分は家庭連合に騙されたことになる。献金は全て納得して献金した。
- 鬱病患者に対する医師の生活指導は飲酒を控えるようにというのが一般的であり、W1の娘が毎日のように酒を飲み歩いていたのだとしたら、W1が娘の鬱病を治したいという思いを持っていたとはおよそ考えられなかった。
- W1の弁護士が2022年8月5日付で家庭連合に送った通知書には、W1が受けたという「被害」が記載されていたが、娘が鬱病等の精神病を患っていたとか、このことを元に献金するよう言われたとは一切書かれていなかった。
- W1が、結婚できずにいる弟のために、家庭連合の儀式である霊肉祝福(霊人との結婚式)を行ったところ、弟が結婚相手のことを夢で見るようになった。また、結婚式の主礼の男性を夢で見たというので、文鮮明師の写真を弟に見せたところ、弟はこの人だと答えた。
- 現役の信者らの話によると、W1は仮想通貨詐欺に遭って大金を喪失した後、別の信仰を持つに至ったとのことであった。W1が、詐欺で失った大金を補い別の宗教に使うために家庭連合に献金返還を求めたことが判明した。W1の弁護士が返還を求めた献金には、2016年7月29日付694万2380円が含まれていた。しかし、この時期にW1が献金した事実はなかった。しかもこのように細かな金額を献金することは考えられなかった。これは、銀行の取引履歴を元にした請求であり、仮想通貨投資の入金金額と送金費用を献金と偽って請求しているものと考えられた。
(3)W1に対する尋問結果
W1に対する尋問の結果、W1は、上記「(2)」の「②」の証文の記載内容が真実であること、「③」の発言内容が事実であったこと、「⑥」の弟の証が実際に起きたことを認め、弟に関しては家庭連合の信仰に基づき霊肉祝福を受けて良かったと答えた。また、「⑦」に関して、仮想通貨詐欺で大金を失った事実及び他の宗教にて先祖解怨した事実を認めた。
一方、2015年8月に家系図を元に先祖が地獄にいるなどの話を聞いたとの点については、このとき実際は具体的にどんな話をされたのかと問われても、ほとんど答えることができなかった。陳述書には約20行に亘って長々と記してある様々な脅し文言をW1は一切供述できなかったのである(同記述が捏造の作文であることを裏付ける)。また、献金した際には話を聞いて100%納得して献金したこと、献金しても期待した効果が表れなかったので返金を求めたということを認めた。また、陳述書には、先祖が地獄にいると言われて献金を迫られたと書いてあったが、特に母親に関しては、実際には地獄に墜ちて欲しいほど憎んでいたことを認め、先祖が地獄で苦しんでいるかどうかは関心事ではなく、先祖解怨・先祖祝福などを行った目的が,あくまでも霊界の働きにより現世の自分や家族が抱える課題の解決を期待する「現世利益」にあったことを認めた。
更に、娘の鬱病については、娘が20歳前後に一度精神科に行っただけだと供述した。しかも、「私が浅はかで、行ったら何か解決策が見つかるかと思って行かせてしまった」などと供述し、娘との関係改善の糸口を求めて受診させたに過ぎなかったことを認めた。また、W1は、娘の精神状態を聞かれた際には、単に態度が明るくなかったという程度のことしか供述しなかった(文科省側の再主尋問)。
W1の娘が精神科を受診したとされる20歳の時というのは、2003年頃のことであり、W1が家庭連合に出会う12年も前のことであり、その間、娘は精神科を受診したことも治療を受けたこともなかったのである。しかもW1が述べた「私が浅はかで、行ったら何か解決策が見つかるかと思って行かせてしまった」というのは、本来精神科に行かせるべきではなかったのに行かせてしまって却って結果が悪かったことを意味している。即ち、実際には精神病ではない娘を精神科に行かせれば親子関係を改善できる糸口が見つかるのではないかと軽率に考えたところ、逆の結果を招いたということである。
そして,W1は、陳述書の内容を確認した上で署名捺印したのかどうかについて、証人尋問で確認を受けると、「細かくは読んでいなかった」と回答した。要するに、陳述書にはW1の認識と異なる箇所があり得るということである。
以上のことから、W1が勧誘を受けた当時、娘が鬱病などの複数の精神病を患っており、「どうにかして娘の病気を改善させる方法はないか」と常々思っていたとか、家系図を元に先祖が地獄にいるから解放して因縁を断たなければならないと言われたとする陳述書の記載が、いずれも文科省担当者の作文であり、本人の認識にはない捏造事実であったことが明らかとなった。

Nobuya Fukumoto graduated in March 1988 from the Faculty of Law, The University of Tokyo. In October 1988, he passed the National Bar Examination. In April 1991, he was appointed as a Public Prosecutor. In 1996, he studied at the University of Notre Dame Law School, in the USA. In 1997, he
served at the Ministry of Justice. From
August 2000, he is an attorney at law in private practice, with extensive experience in legal writing and publications.


