統一教会解散は、左翼及び日本共産党の古き夢だ。しかしなぜ自民党の岸田首相はなぜこれに従ったのか。
増渕賢一

マスコミは“人権”を前面に出して正義を主張するが、マスコミの主張にしたがわない者たちの「人権」は平気で無視する。マスコミは家庭連合に対して「反社会“的”団体」とのレッテル貼りをして憚らないが、「反社会的団体」とは本来、警察庁が指定した、「暴力団及び疑似暴力団」「政治ゴロ集団」等を指す。それとは別に警察は「破防法」に基づく“監視団体”として「日本共産党」「朝鮮総連」「極左暴力集団」「オウム真理教」など指定している。家庭連合はそのいずれの指定も受けていない。にも拘わらずマスコミは、「反社会的団体」の如く報道して反省の色もない。
家庭連合を厳しく追及し、解散を実現しようとする弁護士の中には、「オウム真理教に対する破防法適用」に強固に反対した者がいると云う。彼は、「破防法適用の先例」を何としても防ぎたかったようだ。つまり、破防法に基づく監視団体である共産党を守りたかったのだ。大勢の死傷者を出したオウム真理教の破防法適用には反対し、刑事事件を犯していない家庭連合の解散には賛成するというのは矛盾ではないのか?彼らは党利党略のために行動しているのだ。こうした意見を私は2022年12月15日付で自分のブログにも書いた。
また、マスコミは、政治家が反社会的団体である家庭連合やその関連団体と関係を持つと、彼らの反社会的行動に「お墨付き」を与えると断罪する。しかし、例えば私が、彼らを評価するのは、彼らが日本を左傾化から守るために命がけで闘った勇士であるという点だけである。宗教の専門家でない私たち政治家が彼らの信仰に「お墨付き」を与えることなどできない。これも、左翼特有の「本質ずらし」だ。そもそも、彼らは再臨のメシヤを信じているのであって、俗人である政治家を信奉しているのではない。我々政治家が家庭連合ないし関連団体の会合に参加したことを理由に家庭連合に献金する信者など一人でもいるのか。また、仮にそうした信者がいたとして、何故それが違法なのかは不明だ。家庭連合に献金されて困るのは左翼である。彼らの本音は、「反共団体に献金するな」ということだ。それを「被害」だというのは印象操作だ。消費者の被害ではなく共産党の被害なのだ。
しかし、自民党の国会議員達は、マスコミのフェイク・ニュースが恐いのか、家庭連合及び関連団体との関係を問われると、“知らぬ存ぜぬ”を貫き通した。選挙になれば当選しなければならないので、確かに難しいところではある。しかし、あろうことか、2022年8月31日には岸田総理までもが記者会見で、自民党総裁として家庭連合との断絶を幹事長に指示したと発表した。後日自民党はガバナンスコードを改訂し、「旧統一教会及びその関係団体との関係遮断を徹底」するとの方針を打ち出した。松野博一官房長官の国会答弁によると、「関係団体」には国際勝共連合も含まれると言う。
岸田首相がまだ大学に入るか入らない頃から、日本が左傾化しないよう命がけで闘ってきた者達と関係断絶するとは、一体何を考えているのか?彼らのお陰でその後の平和な社会があったのではないのか?岸田首相は、彼ら以上に命がけで日本のために闘ったことがあるのか?岸田首相の行動こそ「保守の本旨」に反すると言わざるを得ない。
1987年(昭和62年)に国会質疑で中曽根康弘総理大臣(当時)は日本共産党の議員から国際勝共連合との関係を絶つよう迫られたとき、「思想と行動の自由に対する重大なる侵犯発言であると私は考えています。共産党の独裁的な政策のあらわれではないかと私は考えています。こういう思想と行動の自由を侵害するような、こういう憲法違反的発言はぜひ慎んでもらいたい」と答えてはねのけた。岸田首相もこのような正論で返していれば、何の問題もなかった筈だし、家庭連合の解散請求という飛躍した事態にはならなかった筈だ。岸田氏も総理になれば、安倍晋三元総理大臣のように胆力のある政治家に変身するものと期待したが、見込み違いだった。

私は青年期、高橋和巳の小説「邪宗門」を読んで、信教の自由は、民主主義社会の根本であり、政権の恣意で解釈を曲げられるものではないということを理解した。またその後、民主主義に則り現行の憲法に、「信教の自由」が執り入れられた背景に、キリスト教社会に於ける、「ユダヤ教迫害」があったことも知った。そのような認識を持つ私は、岸田政権が、「統一教会」に対する解散命令を云々するのは、支持率回復のための”ポーズ“に過ぎないと思っていた。従って、岸田政権が解散命令を実行するなどとは夢にも思っていなかった。
ところが、文科省は2023年10月13日、家庭連合に対する解散命令請求を裁判所に申し立てた。
同月12日付産経新聞記事を読んだ私は、岸田政権は衆院解散総選挙と統一教会解散命令を連動させるつもりかと思い、愕然とした。記事によると、岸田首相が2022年10月に宗教法人法の解散命令規定に関する解釈を一夜にして変更し、朝令暮改を行ったことから、宗教審議会には異論もあったという。にも関わらず、文化省側が委員らに対して「内閣が飛んでしまう」と訴えて合意形成を図ったというのだ。この記事を見て私は、岸田政権は保守の皮を被った日和見政権であったことを確認した。
他の保守層も、大なり小なり同じような印象を持ったであろう。野党やメディアからの攻撃に対してまともに反論できず、自身の保身のために信教の自由を侵害する総理大臣をどうして国民は信頼できようか。自民党を支持してきた多くの保守層にとって岸田総理の行動は「弱腰」と映り、人気取りのために宗教迫害を行っても支持率は下げ止まらなかった。
2024年1月、前年来の政治的混乱から宏池会は遂に派閥解散を決めた。「天道」を否定する者の末路は悲惨だとしかいいようがない。宗教団体の解散をもくろんでいる間に自派閥が解散するとは。今からでも遅くはない。宗教迫害を直ちにやめるべきだ。
オウム真理教が起こした「地下鉄サリン事件等」は、本来であれば”国家転覆罪”に相当する重大犯罪である。また、同教団が関わった「弁護士殺害」などは現行法でも最高ランクに位置づけされる重大犯罪である。

それに対して、統一教会はどのような重罪を犯したのか。宗教に対する寄付行為は“一般的な行為”であり、キリスト教会に於ける、「ドネーション」などは習慣と言ってもいい。更に、ある宗教団体などは一夜で数十億、数日で数百億を集めることを誇っていたこともある。私は、他宗教の者から見れば、「一片の紙に書いた文字に過ぎない“戒名”」に数十万円を支出している。私の所業は“洗脳”されたが故であろうか。それらが犯罪であるとすれば、すべての宗教団体は解散させられることになる。栃木県弁護士会長まで務めた弟によると、日本の弁護士会の幹部は殆ど左翼だと言う。「宗教は阿片」と信じ込んでいる、「全国霊感商法被害者弁連」などの主張を取り入れての解散命令請求には、何の意味もない。
しかし、岸田政権があくまでも解散請求を取り下げないなら、最後の望みは司法しかない。日本の司法界が、韓国の司法界の様に堕落していないことを私は信じる。裁判所が「信教の自由」、「思想信条の自由」という「基本的人権」を無視しないことを信じたい。私のこうした意見は、2023年10月31日付で「私は、基本的人権を“断固”として守る側に立つ!」と題してブログに書いた。

Toshikazu Masubuchi was born in 1946 in Utsunomiya City, Tochigi Prefecture. After a business career in his father’s construction company, he entered politics and in 1975 was elected as a member of the Tochigi Prefectural Assembly. In 1991, he was elected as the 80th Speaker of the same Assembly, where he served for nine terms until 2011.

