国連の宗教または信条の自由に関する特別報告者は、2024年3月28日に日本訪問を公式に要請した。驚くべきことに、彼女の要請は受け入れられなかった。
マッシモ・イントロヴィニエ
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日本に関して、何か非常に奇妙なことが起きている。国連がエホバの証人や他の宗教的マイノリティに対する日本の姿勢を批判した後、日本政府は宗教または信条の自由に関する国連特別報告者であるナジラ・ガネア氏の日本への公式訪問を阻止しようとしているようだ。
2024年3月28日、同特別報告者は日本への国別訪問を実施したいと公式に要請した。彼女の要請は国連のウェブサイトに公式に掲載されている(上のスクリーンショットを参照)。
にもかかわらず、訪問は予定されていない。これは日本が同意しなかったことを意味する。日本は民主主義国家であり、2011年に特別報告者に対する継続招待を行った国だが、個々の訪問が実際に行われるには確認が必要である。宗教または信条の自由に関する特別報告者による2024年3月の要請の場合には、それが行われなかった。
私は2011年に人種差別、外国人排斥、キリスト教徒や他の宗教の信者に対する不寛容および差別と闘う欧州安全保障協力機構(OSCE)の代表を務めていたので、この手続きについてはよく知っていると付け加えておきたい。OSCE代表の国別訪問制度は、国連特別報告者が用いた制度を模倣したものである。私は特定の国を訪問する意向を表明したが(その中にはOSCE史上初のバチカン訪問が含まれていたが、これは受け入れられた)、実際にそこに行くにはその国からの特別招待が必要だった。
OSCEや国連の代表者や報告者はどちらも、通常は全体主義国家や非民主主義国家を訪問することはできない。訪問を明確に拒否する国はほとんどない。何かを隠したい者たちが使う戦略は、外交用語で”fin de non recevoir(フランス語で「未受信の終了」の意)”と呼ばれるものだ。彼らは単に回答を無期限に延期するのである。

しかし、時には全体主義国家でさえ、面子を保つためにそのような訪問を認めるべきだということを理解している。”Bitter Winter”は、2018年6月に要請された新疆訪問をめぐって、中国と当時の国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレ氏との間で繰り広げられたいたちごっこの物語を報じた。国際社会からの相当な圧力の後、訪問は2022年に実現した。中国は2020年と2021年に新型コロナウイルス感染症を口実にしたが、2018年と2019年には新型コロナウイルスによるロックダウンはなかった。
訪問後、報告者は通常、報告書を発表する。バチェレ氏の新疆訪問後、中国は報告書の発表に反対するロビー活動を開始した。バチェレ氏は高等弁務官としての任期終了前日の2022年8月31日にようやく報告書を発表した。中国は「ジェノサイド」という言葉の使用は防ぐことができたが、報告書に「人道に対する罪」が言及されていることに対しては不満を抱いていた。
この最近の前例は極めて重要である。中国でさえ、いつもの駆け引きを続けながらも、国連の高官級人権代表の訪問を認めないことは、否定的な報告をされること以上に、国際的評判という点ではより悪いのだということを最終的に悟ったことを示している。
なぜ日本は中国よりもさらに悪い国際的立場に自らを置くのであろうか? もちろんその理由は、ガネアが教育に対する権利に関する特別報告者ファリダ・シャヒード、意見と表現の自由に対する権利の促進と保護に関する特別報告者アイリーン・カーン、平和的集会及び結社の自由に対する権利に関する特別報告者クレマン・ニャレツォシ・ヴールと共に、日本政府を大いに困惑させる書簡に共同署名をしたからである。日本政府は6月27日になって、この声明に対して非常に弱い回答を提出した。
報告者たちの書簡は、2022年に安倍晋三元首相が暗殺された後、日本政府が統一教会とエホバの証人の両方(および潜在的に他の宗教団体)を標的とした一連の措置を講じたことを、明確に非難した。暗殺者は、彼の嫌う統一教会に安倍元首相が協力していたため、彼を成敗したかったと主張した。報告者たちは、一部の措置は「中立性と非差別の原則に反するだけでなく、宗教的または信条的マイノリティに対する偏見と疑念を助長することになりかねない」と結論付けた。また、標的となったグループに対する辛辣な批判で知られる反カルト主義者が、規制を起草する際に政府に協力していたことに懸念を示した。
一方、日本政府は東京地方裁判所で、現在は世界平和統一家庭連合と呼ばれている統一教会の解散を求める訴訟を起こしている。日本では、法人解散は死刑宣告に等しい。解散した宗教法人の資産を剥奪し、事実上、通常の活動の継続を不可能にするからだ。著名なフランスの専門弁護士パトリシア・デュバル氏は、この措置は市民的及び政治的権利に関する国際規約に基づく日本の国際的義務に違反していることを立証した。一方で、統一教会の信者だけでなく、エホバの証人の信者に対する差別や身体的暴力も続いている。

これは、彼らが言うように、日本では目に付かないように隠されている。宗教または信条の自由に関する国連特別報告者の訪問は、現在起きていることが受け入れられないことを強調し、多くのNGOや国際的な学者たちによってすでに表明されている非難をさらに強調するであろう。その訪問中に、日本当局が宗教団体での良い経験を報告した何千人もの人々を無視する一方で、不満を抱く統一教会の元信者の2世だけにインタビューしてきたことが明らかになるかもしれない。彼らはまた、「反社会的」と言われている教会とその有効団体による、地震や津波の後の災害救助などの積極的な社会貢献活動も無視した。訪問では、統一教会の関連団体が資金提供しているセネガルの学校に対するものを含め、海外での日本当局の恣意的な行動さえ調査されるかもしれない。
もちろん、日本は訪問を拒否し続けることもできる。しかし、日本文化の多くの特徴と豊かな宗教的伝統を高く評価する者として、私は敬意を込めて日本当局に対し、ガネア訪問の実現を阻止し続けることは、彼女が訪問中に国内で発言したり、報告書に書いたりすること以上に、日本の評判を悪化させるのだということを示唆したい。このことは日本を、人権および宗教または信条の自由の重大な侵害者に危険なほど近づけることになる。そこから逃げることはできても隠れることはできない。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


