米国国際宗教自由委員会は、現状でも悪法であるフランスの「反カルト法」の修正案がもたらす憂慮すべき影響について明言した。
マッシモ・イントロヴィニエ
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米国国際宗教自由委員会(USCIRF)は、フランスが提案している現行の反カルト法の修正案について、宗教もしくは信条の自由にとってこれまで以上に危険なものとなるだろうとの懸念を表明した。
USCIRF は、1998年の国際宗教自由法 (IRFA) によって設立された独立した超党派の米国連邦政府委員会である。その委員は大統領および両党の議会指導者によって任命される。その主たる目的は、世界の宗教の自由の状況を監視することである。このため、USCIRFは、その信頼すべき評価により、宗教または信条の自由に対する深刻な危機的状況について報告している。
ヨーロッパの反カルト統括組織であるFECRIS(セクト主義に関する調査情報センターの欧州連合)と関係している、時に滑稽だが特に聡明というわけでもない反カルト主義者たちが、USCIRFは「Bitter Winter」から不当に影響を受けたキリスト教の右翼過激派集団であるというばかばかしい主張を展開しているが、USCIRFは実際には世界で最も権威ある宗教の自由の監視機関の一つであると広くみなされている。現在の議長は、有名なユダヤ教のラビであり人権活動家であるエイブラハム・クーパーである。
ラビ・クーパーはUSCIRFの公式X(Twitter)アカウントを通じて声明を発表し、「物議を醸す2001年のアブ・ピカール法(反カルト法)に対するこれらの法改正により、エホバの証人やサイエントロジストのような宗教的マイノリティーを標的にしてきたことで知られている政府機関が、カルト関連の刑事手続きに参加することが許されるようになる」との懸念を表明した。彼は、同法改正案が検察官と裁判官の双方に対し、「カルト」関連の訴訟において、問題が取りざたされている政府の反カルト組織MIVILUDESと協議することを推奨し、さらに大きく問題が取りざたされる民間の反カルト団体が、民事の当事者として訴訟参加することを許可するだろうという事実に言及した。

実際USCIRFは、以前にXで発表した声明の中で、フランスにおけるこれらの法改正の議論にも言及し、「政府が『カルト』視するグループに対する国家主導の差別等の、フランスにおける宗教の自由に対する侵害について詳しく知るために、欧州連合における宗教の自由に関する懸念についてのUSCIRFの報告書を読んでください」と呼びかけている。
このUSCIRFの報告書は2023年7月に発行され、以下のように指摘している。「EUのいくつかの政府は、特定の宗教団体に関する有害な情報の拡散を支援または促進してきた。例えばフランス政府は、1994年に設立されたフランスの非営利団体である『セクト主義に関する調査情報センターの欧州連合』(FECRIS)に資金を提供しており、FECRISは一部の宗教団体に『セクト』や『カルト』という軽蔑的なレッテルを貼っている。同様に、フランス内務省傘下の公的機関である『セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部』(MIVILUDES)は、エホバの証人やサイエントロジー教会を含む諸団体を定期的に非難する年次報告書を発表している。この組織は、政府機関、宗教団体、市民団体と提携して、いわゆる『カルト』について情報を提供しており、フランスのメディアからはおおむね好意的な反応を引き出している。その結果、MIVILUDESがセクトやカルトとしてレッテルを貼った宗教団体と関係のある人々の社会的名誉に対して悪影響を及ぼしている。MIVILUDESはまた、有害な「セクト」であるとみなされた宗教団体を標的とするさまざまなNGOに資金提供している。その中には、『セクトの被害を受けた個人と家族を守る協会の全国連合』(UNADFI)や『精神操作反対センター』(CCMM)が含まれている。」
またXにおいて、USCIRFはモハメド・マジド委員の署名付きで、「USCIRFは、既存のカルト関連規制を強化し、違反に対する罰則を強化しようとしているフランスの修正案が、宗教の自由に与える影響を懸念している」と付け加えた。
修正案は、「精神的服従」または「洗脳」という架空の技術によって「被害者」を抑圧する「カルト」を犯罪者扱いすることを容易にするものであるが、それらが存在し、新宗教運動によって用いられているとの主張は数カ国の法廷ならびに新宗教運動を研究する学者の圧倒的多数によって否定されている。 USCIRFはまた、「カルト」が洗脳や精神操作を用いているという理論について、それはフランスやロシアを含む一部の政府の支援を受けてFECRISが広めた疑似科学的な反カルト・イデオロギーの一部であると繰り返し述べている。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


