2009年に教会は「コンプライアンス宣言」を発表した。その結果、安倍元首相暗殺当時には教会に対するクレームはほぼゼロにまで減少した。
福本修也

家庭連合が2009年に行った「コンプライアンス宣言」後について、東京地裁は、裁判件数、及び裁判上・裁判外の和解件数共に減少していることを認めた。しかし、裁判上・裁判外の和解事例においても、不法行為があったものと「合理的な推測」によって認定し、また、判決や和解が存在しない場合についても、顕在化していない不法行為事例があったものと想定した。こうした認定には以下の問題点がある。
裁判における事実認定は証拠によって行われなければならない。しかるに、宗教法人の解散という重大な事案を審判するのに、事実の存否を推測や想定によって認定するというのでは、もはや裁判を受ける権利の侵害である。
消費者庁の2022年9月30日付「旧統一教会に関する消費生活相談の状況について」と題する文書によれば、2012年から2021年までの10年間の全相談件数に占める家庭連合に関する相談件数の割合は0.0095%であり、2022年4月~6月に関しては0.0033%であった。したがって、相談件数なども殆どなかったと言えるのであり、実際には裁判や和解事案として顕在化していない不法行為事案など存在しない。
一方、2022年7月の安倍元総理銃撃事件以降、家庭連合に対する激しい批判報道が吹き荒れ、自民党が家庭連合との断絶を発表する中、全国で家庭連合に対するクレームが起きた。その結果、全国統一教会被害対策弁護団が結成され、2023年2月から9次にわたる集団交渉の申入れがなされ、元信者ら195人の「被害回復」を名目に、家庭連合に対して損害賠償を求めるに至っている。
ところが同弁護団が9次にわたる集団交渉において各通知人の「被害時期」を一覧表にしたものによれば、上記集団交渉の通知人の中に、2019年以降に入信した者は存在しない。さらに、同集団交渉の事案を分析したところ、その殆どは20年以上前に家庭連合の信者となった者に関する古い事案であり、最古の事案は約60年も前のものであった。全国のメディアがあれだけ煽っても、最近の被害を訴える者など殆どいなかったという事実は、2009年以降の事案で「顕在化していない」事例などないということを意味している。
文科省作成陳述書に捏造があったことは、陳述書作成者やその親族が新たに提出した陳述書等で明らかとなったのみならず、昨年12月に行われた2人の陳述書作成者に対する尋問結果からも明らかとなった。陳述書の記載と矛盾する証言がなされたり、「陳述書には記憶にないことが書かれている」との証言が得られたからである。文科省が陳述書を捏造したのは、文科相自身が、解散事由が存在しないと判断し、証拠を補うために捏造という悪質な手段に頼らざるを得なかった事実を裏付けている。

裁判所は、決定文において、被害を訴える元信者の陳述書(捏造事実の有無を問わず)を証拠として一切引用しなかったが、他方で、前記のとおり和解事実から抽象的な推測により不法行為を認定し、解散事由を認めたのであった。これは裁判として著しく不公正な認定である。
| コンプライアンス宣言以前の不法行為を民事判決によって認定することの問題点 | 民事手続には刑事手続のような厳格な事実認定はされない |
| 元全国弁連弁護士自身「カルトだと負け」と証言するほどに民事裁判は不公正 | |
| 背教者の証言偏重 | |
| 原告の過半数が拉致監禁被害者であることを無視 | |
| 1審で適法と判断した行為まで解散事由に | |
| 事案ごとに違法性認定基準が異なる | |
| 社会規範違反を理由に違法性を認定する過去の民事判決は国際法違反 | |
| コンプライアンス宣言以降の不法行為を推測等によって認定することの問題点 | 裁判件数等が減少している事実を認めつつも、これを補うため、①裁判上・裁判外の和解事案についても「合理的な推測」で不法行為を認定②顕在化していない事案を勝手に想定 |
| 文科省が陳述書を捏造した事実は一切無視 |
解散が認められるためには、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められなければならない。しかるに、推測では到底「明らか」に認められるとは言えない。
本件決定は、信教の自由に対する事実上の障害を考慮し、解散命令は必要やむを得ない場合にのみ認められると判示する。しかるに、実際には「顕在化していない」不法行為など存在しないことから、解散命令を発すべき必要性・不可避性など存在しない。しかも、2022年12月に献金にまつわる新法が制定され、罰則をもって献金を規制し、家庭連合が新法に適合する改革を行っている以上、家庭連合において問題のある献金受領などできるわけがなく、解散命令の必要性・不可避性は認められない。

結局のところ、裁判所は、法理論を無視し、憲法、国際法、手続法も無視し、違法性認定基準を極限まで広げて過去に遡らせ、推測という信じがたい手法によって不法行為事実を認定して被害を極大化して見せ、これらを根拠に解散命令を下したものであり、今回の解散命令は政府及び偏向メディアによって煽られた世論に迎合して下した「結論先にありき」の不当判決であったと言える。
裁判所が、法の支配、法治主義といった原則を無視して一時的な世論に迎合する判断を下すことがいかに危険なことであるかは明らかである。
保守系言論人の間ではさっそく、今回の判決に対する批判が巻き起こっている。中には、安倍総理をあやめた殺人犯の願望を叶える決定だとして、YouTube 上で怒りをあらわにするジャーナリストも多数いる。今回の解散命令決定を見て学習した模倣犯が国内外で現れ、自らの政治的主張をアピールするために要人をテロの標的にする可能性は高まった。
また、仮に解散命令が確定すれば、解雇されて職を失う家庭連合職員の2000名(扶養家族を含め4000名余り)が路頭に迷うことになる。今の社会情勢で彼らの再就職が極めて困難であることは容易に想像がつく。家庭連合職員の中には出自が信仰に由来する2世公職者も相当数いる。10万人を超える家庭連合の信者は、酷い偏向報道の故に著しい社会的差別と迫害を受け続けており、自殺者まで出ている。もし、解散命令が確定すれば、信者らに対する差別・迫害が今以上に激化し、取り返しのつかない人権侵害が生ずることは目に見えている。しかし、裁判官がこの決定を出すに当たってこれらの深刻な事情を考慮した形跡は全くない。
自らの出世を動機として一時的世論に迎合して解散命令を下した裁判官らは、自らが下した決定によって生じる多大な犠牲・悲劇そして模倣テロの代償をその身に負う覚悟があるのであろうか。

Nobuya Fukumoto graduated in March 1988 from the Faculty of Law, The University of Tokyo. In October 1988, he passed the National Bar Examination. In April 1991, he was appointed as a Public Prosecutor. In 1996, he studied at the University of Notre Dame Law School, in the USA. In 1997, he
served at the Ministry of Justice. From
August 2000, he is an attorney at law in private practice, with extensive experience in legal writing and publications.


