裁判所は、判断が信教の自由を侵害するものではないという説得力のない見解を示し、さらに寄付に関する新法を遡及的に適用した。
福本修也
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この連載の第1回では、日本が「公共の福祉」を理由に人権を制限しないよう求める国連の3つの勧告について触れた。
しかし、文科省は、この勧告を無視して、「公共の福祉」を理由とする解散命令を申し立てた。即ち、文科省が解散命令申立の根拠条文として挙げた宗教法人法81条1項1号は、「法令違反」のみならず、「著しく公共の福祉を害することが明らかに認められる行為」との要件を含んでおり、「公共の福祉」を理由に解散命令を申し立てたものである。
宗教法人を解散すれば、その宗教施設等を利用し続けることができなくなり、信徒らは、当該施設において宗教的表現を行うことができなくなる。従って、「公共の福祉」を理由に宗教的表現を制約することになり、明らかに国連勧告に違反している。
東京地裁は、解散命令は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものと判示しつつ(最高裁決定踏襲)、法人格の喪失により事実上生ずる影響は、法人格を有していたことに伴う反射的利益だと判示した(103頁)。反射的利益だから、制約しても信教の自由や宗教的表現の自由の制約にはならないとの趣旨のようである。

なお、東京地裁は信教の自由に一切の配慮を示していないわけではなく、信教の自由に対して事実上の支障が生じることは認める。その結果、宗教法人を解散するには「必要やむを得ない」ことが必要であるとする(102頁)。しかし、実際には、後記のとおり、必要やむを得ないとは到底言えない本件事案において解散事由を認定しており、これも、信教の自由に対する配慮が欠如しているとの批判をかわすための表向きの判示だと考えられる。
解散事由とされた不法行為を認定する際の違法性認定基準について、東京地裁は昨年最高裁が献金を巡る事件で示した基準を採用した。しかるに、この基準は、最高裁判決自体が明示したとおり、2022年12月に家庭連合に対する批判的な世論の高まりを受けて国会が制定した献金新法(法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律)を参考にしたものであった。

新法は、献金を受領する法人等に対して、献金を行う者又はその配偶者等の生活の維持を困難にすることがないよう配慮すべき義務を課すという異例のものであった。しかるに最高裁は、同法を参考にした結果、献金により寄付者又はその配偶者等の生活の維持に支障が生じるなどの事情の有無・程度まで考慮して社会通念上相当な範囲を逸脱する場合には違法とする違法性認定基準を採用したのであった。
ところが、こうした高度の配慮義務は新法によって新たに設けられたものであり、新法が設定した義務を過去の行為に遡及させて適用することに対しては、海外の識者からも批判があった。しかるに東京地裁は、この最高裁が判示した違法性認定基準を用いて解散事由の有無を判断したのである。

なお、同基準は、法定されていない社会規範である「社会通念」を判断基準としており、こうした違法性認定基準を採用すること自体、前述のとおり国際自由権規約18条3項違反である。

Nobuya Fukumoto graduated in March 1988 from the Faculty of Law, The University of Tokyo. In October 1988, he passed the National Bar Examination. In April 1991, he was appointed as a Public Prosecutor. In 1996, he studied at the University of Notre Dame Law School, in the USA. In 1997, he
served at the Ministry of Justice. From
August 2000, he is an attorney at law in private practice, with extensive experience in legal writing and publications.


