日本の裁判所の判決により、宗教団体への多額の献金を疑わしく思う風潮が、数百もの団体を潜在的な標的にする可能性があることが確認された。
マッシモ・イントロヴィニエ
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2022年7月、日本の安倍晋三元首相が暗殺された。犯人の男は、安倍氏が統一教会(現在の「世界平和統一家庭連合」)と親しい関係にあったことを理由に、彼を罰したかったと主張した。また、犯人は統一教会を憎んでおり、その理由として、彼の母親が統一教会の信者として過度な献金を行った結果、2002年に破産したことを挙げた。なお、その破産は事件の20年前に起きたものである。
この事件をきっかけに、反カルト運動と弁護士団体の扇動により、統一教会や「カルト」に対する全国的な社会的パニックと魔女狩りが発生した。その結果として、新たな法律や規制が制定され、宗教団体に対して「社会的相当性を逸
脱する」献金を行った信者やその家族が、たとえ何十年経っていても、その献金を取り戻せるようになった。この法律は、宗教団体が信者を「洗脳」して献金させているという理論を前提としている。しかし、この「洗脳」理論は前世紀以降、ほとんどの民主主義国家の学者や裁判所によって疑似科学的として否定されている。
日本では多くの宗教団体が、新しいこの法律に対して公然と批判することはなかった。それらの法律が主に統一教会を「罰する」ことを目的としていると考えていたからだ。しかし、『Bitter Winter』は一貫して、この法律がすべての宗教にとって危険であると警告してきた。なぜなら、献金を募る際に団体が信者に与える「困惑」や「威迫」といった概念が曖昧で定義されておらず、反カルト活動家や貪欲な弁護士によって悪意ある解釈がなされ、気に入らない宗教団体を破壊するために利用される恐れがあるからである。法律は遡及適用されることはないが、その存在自体が、宗教団体への大口献金を疑わしく思わせる風潮を生み出し、新法が直接適用されない場合でも、献金に対する否定的な判断を助長する可能性がある。
2月14日、日本のメディアは、高知地方裁判所がPL教団の2世信者である女性の訴えを認めたと報じた。彼女の弁護士は、明らかに統一教会の裁判例に触発され、宗教団体に対し、寄付金986万円の返還と損害賠償を求め、総額1100万円の支払いを請求した。裁判官は、この女性が「反社会的な」献金の勧誘の被害者であると認定し、特に彼女が精神的に不安定な状態にあり、ストーカー被害の妄想を抱いていたこと、また「社会通念上相当な範囲を逸脱する」献金を行い、それによって「経済的困窮を引き起こし、家庭の財政を混乱させた」と判断した。報道によると、判決では2023年の新法には言及されていないものの、2024年の最高裁による統一教会に関する判決の基準に従っているようである。
この判決は、市民的及び政治的自由に関する国際規約(ICCPR=自由権規約)に違反する可能性がある。なぜなら、「社会的相当性」という概念に基づいて宗教の自由に制限を課しているからだ。パトリシア・デュバル弁護士が統一教会事件に関する研究で示したように、「社会的相当性」は、自由権規約の下で信教の自由の制限を正当化する基準に含まれていない。さらに、この判決は、宗教団体に対し、献金を受け入れる前に、それが「家庭の財政を混乱させるかどうか」を確認する義務を課している。しかし、これは寄付者の財務状況を調査することを意味し、宗教団体がプライバシー法を侵害せずに行うことは不可能である。実際には、これらの判決は、大口の献金を一般的に禁止する結果を生み出しているのである。

私は1980年代、日本とブラジルにおいて、PL教団を訪れた最初の非日本人研究者の一人である。そして1989年、私のイタリア語の百科事典『Le nuove religioni(新宗教)』にPL教団についての項目を執筆した。PL教団は、日本の「山岳宗教」の長い伝統を受け継ぐ宗教団体であり、その起源は1912年に大阪の商人・金田徳光が神道系の御嶽教の分派として創設した「御嶽教徳光大教会」にさかのぼる。金田の主な信奉者の一人が、教祖の御木徳一であった。彼は1931年に教団の名称を「ひとのみち」と改め、信者数を約100万人にまで増やした。1938年に御木徳一が亡くなると、その息子である御木徳近が後を継いだ。しかし、戦時中の軍国主義政権を支持しなかった他の宗教団体と同様に、「ひとのみち」は解散させられ、御木徳近は逮捕された。彼は1946年に釈放され、その後、教団を再編し、「PL教団」と改称した。1983年、御木徳近が亡くなると、養子の御木貴日が教団を継承し、2020年に彼が亡くなるまで、PL教団の信者数は約300万人に達していた。特に中南米で大きく発展し、アメリカ、カナダ、その他の国々にも信者を持つようになった。
PL教団は、「人生は芸術である」という理念で知られており、人間のあらゆる真の自己表現が、美を通じて幸福を生み出すと考えている。その一環としてスポーツも重視しており、PL教団は大阪にあるPL学園高校の野球部の卓越した実力でも広く知られていた。しかし、この野球部の活動は2016年に終了している。
PL教団における献金は、その中心教義を通じて理解されるべきものである。創造的で芸術的な自己表現は、神の計画と一致しており、人間が日常生活において十分な注意と責任を持って行動することが求められる。しかし、残念ながら、それが常に実践されるわけではない。その場合、人間は神の世界から「警告(みしらせ)」を受け取る。これは事故、病気、不運といった形で現れることがある。これらの警告は厳しいものではあるが、最終的には人間が自らの人生を正しい道に戻すための有益なものである。信者は、自らの不運の根本的な原因を探るため、「神示(みおしえ)」を求めるよう勧められる。通常、これはPL教団の本部に書面で相談を送ることで行われる。私が1980年代にPL教団を
調査した際、信者が「みおしえ」を求める手紙を送っただけで、まだ返答を受け取る前に問題が解決したという話をいくつも聞いた。
しかし、この相談には、神霊(みたま)の前での祈り(おやしきり)と、信者の誠意(まこと)を示すための献金(宝生・ほうしょう)が伴うべきとされている。特別に聖別された封筒に包まれた献金は、PL教団の信仰の道において重要な役割を果たしている。この献金への干渉は、宗教または信条の自由に対する重大な侵害である。統一教会に対する反対キャンペーン後の日本においては、もはやどの宗教も安全ではないことが証明された。そして今、その矛先はPL教団に向けられている。次に標的にされるのは、いったいどの宗教だろうか。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.


