鈴木エイトは、欧州反カルト主義者の典型的な態度に倣い、敗訴した事件で「ほぼ勝利した」と主張している。この記事では、鈴木を敗北させた弁護士がその理由を説明する。
著者 弁護士 中 山 達 樹
Read the original article in English.

2023年10月、ビター・ウィンターは、日本の反カルト・ジャーナリストの鈴木エイトが名誉毀損で東京地方裁判所に提訴されたと報じた。
そのうちの1つは、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)信者の後藤徹が、鈴木エイトの記事・コメントにより名誉を毀損されたとして起こした訴訟である。この事件で東京地方裁判所は、2025年1月31日、鈴木の意見の一部が名誉毀損であると断じ、鈴木に11万円の損害賠償を命じた。被害額は象徴的なものだが、SNSを通じた名誉毀損の場合に日本で与えられる通常の金額といえる。本当の罰は、この敗訴判決そのものだ。
後藤徹は、12年半にわたり、自分の信仰を失わせようとする脱会屋や親族らに拉致されて監禁されていた。過去の監禁裁判の判決で、このディプログラミング(拉致監禁・強制棄教)は「違法」と判断され、2015年の最高裁で確定した。
しかし、鈴木エイトは、この監禁裁判の全容を知っておきながら、後藤氏が自発的に社会から身を隠す外出恐怖症で、何年も部屋に閉じこもる「引きこもり」にすぎないと何度も表現した。
2023年、日本の反カルト運動を批判するジャーナリストの福田ますみが、なぜ後藤氏をそう言って侮辱し続けるのかと鈴木に問うと、鈴木はぶっきらぼうに「どうでもいい」と言い放ち、SNSで炎上した。その後の同年10月、後藤氏は鈴木に対して名誉毀損訴訟を起こした。
この訴訟で鈴木エイトは、後藤氏が自発的に社会から距離を置く「引きこもり」だと証明する新たな証拠を何一つ提出できなかった。鈴木の主張・証拠は、いずれも2015年に後藤氏の勝利で終わった監禁裁判で提出済みのものであった。そのため、今回、東京地方裁判所は、鈴木の発言が不法に後藤氏の社会的評価を低下させたと判示した。
この後藤氏の勝利は、2022年の安倍元首相暗殺後、家庭連合に下された初の有利な判決といえる。安倍氏暗殺後、反カルト運動が日本で勢いを増し、家庭連合は全国的な中傷と強い社会的差別を受け、政府はこの宗教団体を解散させる訴訟を起こした。この訴訟は東京地方裁判所で係属中である。
このような日本の敵対的な雰囲気の高まりの下で、家庭連合と関連団体に対して過去数年間に下された約10件の全ての判決は、家庭連合と関連団体にとって好ましくないものであった。そんな中、日本の裁判では「カルトなら負ける」という「不文律」があると言われているが、鈴木に対する後藤氏の勝利が、この間違った潮流を変えるためのきっかけになってくれればと思う。

この鈴木エイトの敗訴が、鈴木の信頼性を低下させたこともまた重要である。鈴木が「カルト」と呼ぶ家庭連合に関する鈴木の主張が安倍氏暗殺の一因になったのだが、鈴木は暗殺事件後に人気者になり、さらに全国を覆う反家庭連合キャンペーンを主導した。
鈴木の主張は、
(1) 家庭連合への真摯な信仰心から多額の寄付をした母親を持つ山上徹也被告は、家庭連合の「犠牲者」であり、また、
(2) 自民党は、歴史的に安倍氏の下で家庭連合と親密な関係を維持してきた
というものである。鈴木のこの主張は、自民党を攻撃する左翼政党や霊感弁連などの反カルト団体から歓迎された。しかし、家庭連合に対する党派的攻撃の国民的リーダーであった鈴木の敗北は、日本での党派的なキャンペーンを弱体化させるだろう。
敗訴判決後、鈴木は命じられた損害賠償額が僅少であったことから、判決は「ほぼ勝利」だった」とコメントした。これは単なるプロパガンダである。鈴木は、欧州の反カルト主義者から、実際には負けたのに自分たちが勝ったと組織的に主張する胡散臭いテクニックを学んだようだ。
鈴木は、安倍氏暗殺後に「ジャーナリスト」として有名になったが、このプロパガンダによって「反カルト活動家」が本業であることを証明し続けている。鈴木は、「踏み込んだ批判は名誉毀損ではない」と述べて控訴の意向を表明したが、12年半にわたり監禁された被害者を、何の証拠も示さずに「引きこもり」呼ばわりして貶めることは、「踏み込んだ」批判ではなく誹謗中傷であり、犯罪である。
本事件の控訴審は、2025年夏に終結する見通しだ。

Tatsuki Nakayama graduated from the Faculty of Law at the University of Tokyo in 1998. He was admitted as a lawyer in 2005 and graduated from the National University of Singapore Law School in 2010. After working as an international lawyer at a Singapore law firm, he opened Nakayama & Partners in 2015. After studying as a certified fraud examiner in 2016, at Lee Kuan Yew School of Public Policy, and Singularity University, he became a business ethics expert in 2022. He has held executive positions and other important positions in the Inter-Pacific Bar Association, which includes 1,500 lawyers worldwide. His major works are “Global Governance and Compliance” and “Integrity” (both published by Chuokeizaisha), and his recent books include “English Negotiation Techniques” (Heisei Publishing).


