BITTER WINTER

家庭連合の指導者と釜山セゲロ教会の尊敬される牧師は、「韓国法に従う」のでなく、むしろ破る形で拘束されている。

マッシモ・イントロヴィニエ

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Young members of the Family Federation sing for freedom and the release of Mother Han. From X.
家庭連合の若者たちがマザーハンの自由と解放を求め歌っている。出典:X

10月4日、ソン・ヒョンボ牧師の息子ソン・チャンソン氏が切実なメッセージを発表した。「今日、家族で10分の面会に行きました。父はインフルエンザにかかり、声がほとんど出ません。10日先まで処方箋と薬をもらうことは出来ないそうです。どうかこれ以上体調が悪化しないよう祈ってください」。これは決して独裁国家からのメッセージではない。韓国からの報告なのだ。韓国は今、「民主主義」という言葉の意味を試しているかのようだ。

ソン牧師だけではない。82歳の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のリーダーであり、世界中で「平和の母」として知られる韓鶴子総裁も同じく拘束下にある。検察が堂々と行っている韓総裁への扱いは心理戦に他ならない。韓国メディアで報道された公式発表によると、韓総裁は「9月17日に初めて出頭し約9時間半にわたる取り調べを受けた。その後も同月24日に4時間半、29日には10時間20分の尋問を受けた」とされている。わずか2週間でおよそ25時間に及ぶ取り調べを受けたことになる。それでも韓総裁の証言は一貫している。事実も変わっていない。変わりつつあるのは、韓総裁の健康と安全、そして韓国の司法制度に対する信頼である。

韓総裁の事件はどこか非現実的である。起訴内容によれば、韓総裁は教団の資金を使って、失脚した元韓国大統領を含む政治家を支援し、不正に選挙へ影響を与えたとされている。しかし、韓総裁がそうした行為を直接指示したことを示す確かな証拠は、いまだ提示されていない。家庭連合は一貫して韓総裁の役割は政治でなく、霊的なものであると主張している。また、信徒を現在野党である「国民の力」へ大量に入党させたという疑惑も、無理のある主張から既に自滅した。検察は当初「11万人が一斉に入党した」と主張していたが、地元メディアの報道を見ると、その数字は現在3,500人に修正されている。とはいえ、これは複雑に絡み合う一連の疑惑のほんの一端にすぎない。

検察の戦略は首尾一貫した立証を目指すというより、むしろ被告を疲弊させることに重点が置かれている。持病を抱える高齢の宗教指導者に対し、一貫した証言をしているにもかかわらず2週間のあいだに約25時間もの尋問をすることは、明らかに真実の追求ではなく、心理的な消耗を目的にしている。それは、国際人権法の精神だけでなく条文の内容にも明確に違反している。

カリフォルニア州ゴッドスピーク・カルバリー・チャペルで長年牧師を務めるロブ・マッコイ氏の支援を受け、釜山の牧師や長老たちがソン牧師の釈放を求めている。
カリフォルニア州ゴッドスピーク・カルバリー・チャペルで長年牧師を務めるロブ・マッコイ氏の支援を受け、釜山の牧師や長老たちがソン牧師の釈放を求めている。

ソン牧師の事件も同じように事実が歪められている。彼は自分の信徒に対し国民の力党候補者への投票を促したとして起訴された。投票はどの民主主義国家においても保障された権利である。特に自らの価値観に沿う候補者へ投票を呼びかけることは犯罪ではない。それは政治的表現の自由である。しかし、ソン牧師は説教や教会活動が違法な選挙運動にあたるという口実で拘束されているのだ。

仮に検察の解釈を受け入れることになったとしても、過去の判例は検察にとって極めて不利である。過去に宗教指導者が選挙規範に違反したとされた事例でも、科されたのは軽い罰金程度であり、投獄された例はない。韓国で今起きていることが示すのは、法の支配の執行からイデオロギー的処罰への転換である。

トランプ大統領が訪米中の李在明大統領に対し、「教会への悪質な強制捜査」について問いただした際、李大統領は、韓国の司法は韓国の法律に則って動いていると答えた。その発言は、明らかに事実と反している。

韓国法で拘束が認められるのは、逃亡の恐れがあるか証拠隠滅の恐れがある場合に限られている。しかし、韓総裁はすでにパスポートを没収されており、ソン牧師も韓国社会に深く根を下ろした公の人物である。いずれにも逃亡の兆しはまったくない。証拠についても、彼らの教会や事務所はすでに何度も家宅捜索を受け、コンピューター、書類、携帯電話など押収できるものはすべて押収されている。これ以上、いったい何を隠滅できるのか。賛美歌集だろうか。

さらに、韓国は国際法に縛られている国である。同国は「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」を批准しており、その第9条は恣意的な拘束を禁止し、拘束は例外的な措置であって、常態化してはならないと義務づけている。この原則は、「非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルール)」および「被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデラ・ルール)」によって、さらに具体的に示されている。

東京ルールでは、公判前拘禁は必要な場合にのみ厳密に用いられなければならない。そして拘禁の代替措置が優先されるべきと定めている。また自白を引き出したり、判決前に個人を罰するために拘禁を利用することを厳しく警告している。ネルソン・マンデラ・ルールでは、被拘禁者に対する人道的な扱い、医療へのアクセス、そして心理的虐待からの保護を義務づけている。韓国はいま、こうした基準のいずれにも違反している。

ここで明確にしておきたい。韓総裁への取り調べは、証言が一貫しているにもかかわらず続けられており、これは真実の追及ではなく心理的拷問である。また、ソン牧師が収容施設で10日間も基本的な医療を受けられず、持病の治療が放置されたのは、単なる不手際ではなく、明らかなネグレクトだ。これらはそれぞれ偶然の出来事ではない。より深刻な危機の徴候である。

この危機は、宗教指導者だけにとどまらない。政治家の逮捕が相次ぎ、大統領の親中政策に反対する市民デモの参加者たちは、脅迫や規制を受けている。ソウルでは大規模なデモ活動が続いているが、政府の対応は沈黙、監視、そして抑圧である。

私たちがいま目にしているのは、単なる法の乱用ではない。――民主主義の後退である。法の支配は異論を封じるための武器と化し、信教の自由は「脅威」として再定義され、市民の政治参加は「犯罪」として扱われている。しかもそれが、東アジアにおける民主主義の灯台を自称する国で起きているのだ。

韓総裁の事件は国を超えた深刻な側面も浮き彫りにしている。韓総裁の拘束は、韓国と日本が連携しながら、家庭連合を解散させるために仕組まれた、キャンペーンの一環であることが明らかである。2025年3月の第一審判決では教団の解散を命じたが、この判決は現在抗告中である。国連はこの措置が国際法に違反するとして、日本に対して正式に警告している。そして、韓総裁や他の宗教指導者たちに対する韓国の措置は、それをさらに上回る、より深刻な人権侵害にあたる。恣意的な拘禁、強制的な取り調べ、宗教指導者を犯罪者として扱うこと――これらは、民主主義の原則と相いれないばかりか、韓国自身が遵守を約束した国際的な法的義務にも明確に反している。

国連は調査を始め、人権団体は声を上げ、今こそ国際社会が応える時である。沈黙は共犯である。

世界中の信教の自由と人間の尊厳を重んじる人々は、明確で切実な声のもとに結集しなければならない。「マザーハンを解放せよ! ソン牧師を解放せよ!」

なぜなら、もし民主主義という言葉が意味するものがあるとすれば、それは「正義」であるはずだ。たとえ彼らの信仰と声、良心が、権力に異を唱えたとしても。