いま問われているのは、韓国が宗教の自由を尊重する民主国家であり続けるか――それとも、中国の衛星国となり、信仰が罪とされる国へと転落するかという問題である。
マッシモ・イントロヴィニエ
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2025年10月10日、韓国は正式に韓鶴子総裁(世界的に「マザー・ハン(Mother Han)」として知られる)を起訴した。容疑は贈賄、横領、違法な政治献金、証拠隠滅である。特別検察官ミン・ジュンギによって主導されたこの起訴は、国家による保守系宗教運動への弾圧が激しさを増す中で、暗い節目となる出来事である。それは単なる法的手続きではなく、政治的激震であり、道徳的恥辱である。
82歳の韓鶴子総裁は、全世界に何百万の支持者をもつ世界平和統一家庭連合の共同創設者であり精神的指導者である。韓総裁は数十年にわたり、平和の推進、宗教間対話、人道的協力のため邁進してきた。韓総裁の拘束と今回の正式な起訴は、単なる個人への攻撃にとどまらない。――それは、宗教の自由、民主主義の基本原則、そして「信仰と異論は共存しうる」という理念への攻撃である。
起訴の内容は極めて脆弱だ。検察は、韓総裁が2022年に金建希元大統領夫人へ高級品を贈り、保守系議員の権性東氏に政治献金を行ったと主張している。いずれも、当時の尹錫悦大統領への影響力を得るための行為だったというのが検察の見立てだ。しかし、これを裏付ける証拠は存在せず、そのナラティブは政治的作為に満ちた脚本のようである。
本件のもう一つの特徴は、韓総裁が家庭連合の信者を大規模に国民の力党へ入党するよう主導したとする主張であるが、この主張はすでに崩れ去った。検察は当初、約11万人が一斉に入党したと発表したが、地元メディアの報道によれば、その数字は現在3,500人にまで修正された。
また、元大統領夫人や政治家に贈られたとされる品々についての証拠はなく、その金額は、韓国での他の贈賄事件に比べれば取るに足らない金額である。それが家庭連合幹部による独断的な行為ではなく、韓総裁の支持のもとに行われたという証拠は存在しない。
横領や証拠隠滅といった容疑の追加は、韓総裁の長期拘留を正当化するための極端な措置に見える。これは典型的な検察の手法であり、当初の筋書きが崩れ始めると、新たな容疑を積み重ね、標的を逃さないようにするためである。
韓総裁の起訴は、単独の事件ではない。国家の思想的アジェンダに異を唱える保守系宗教団体を標的とした、李大統領政権下で進む広範な流れの一つである。政府を批判してきたソン・ヒョンボ牧師の拘束もその一例である。彼の投獄は、体制に逆らう者がどのような運命になるのかを警告している。
この弾圧は「正義」ではない。「支配」のためである。異論を封じ、思想の画一化に抗う組織を解体し、韓国中の宗教指導者たちにこう突きつけている――「あなたの信仰は新政権に奉仕しなければならない。さもなければ、犯罪とする。」
家庭連合はメディアでしばしば誇張され、合同結婚式や政治的論争などの見出しを通して矮小化され描かれてきた。しかしその裏側では、平和、家庭の調和、そして宗教間協力という原則に根ざした世界的な運動が息づいている。「平和の母」として知られるマザーハンは、これまでに世界各国の指導者と会談し、国連で演説を行い、大陸を越え人道的事業を展開してきた。韓総裁を犯罪の首謀者として扱うことは、荒唐無稽であるばかりか、極めて危険なことである。
彼女の拘束は既に国際的な宗教共同体に衝撃を与えている。さまざまな伝統に属する宗教指導者たちが懸念を表明し、かつて東アジアにおける宗教自由の灯台と称された韓国が、いまや権威主義の淵に沈みつつあることを指摘している。
韓総裁の起訴は韓国の司法が政治化されているという、重大な疑問を投げかける。司法が思想的報復の道具として利用されているのではないか。検察は本当に独立して行動しているのか。それとも、宗教的多元性を敵視する政権の利益のために動いているのか。
その光景は、不名誉極まりない。心臓手術からの回復期にある高齢の女性を法廷に引きずり出し、検察はセンセーショナルな主張を報道機関にリークする。韓総裁の支持者たちは中傷され、その運動は汚名を着せられる。そして法の支配は、政治的都合に合わせてねじ曲げられる。
これは民主主義がとるべき行動ではない。これは、民主主義が死にゆく姿である。
私たちは韓総裁の即時釈放を求める。適正な法手続きの回復を求める。そして、韓国での宗教指導者への思想的迫害の終結を求める。これは一人の女性の問題ではない。これは国家の魂に関わる問題であり、韓国が宗教の自由を尊重する民主国家であり続けるか――それとも、中国の衛星国となり、信仰が罰せられ、異論が罪とされる国へと転落するかの問題である。
世界に知らせ、世界は声を上げなければならない。そして韓国は思い出すべきである――国家の真の強さとは、裁く力ではなく、国を形づくる「自由」を保護する勇気にこそあるということを。

Massimo Introvigne (born June 14, 1955 in Rome) is an Italian sociologist of religions. He is the founder and managing director of the Center for Studies on New Religions (CESNUR), an international network of scholars who study new religious movements. Introvigne is the author of some 70 books and more than 100 articles in the field of sociology of religion. He was the main author of the Enciclopedia delle religioni in Italia (Encyclopedia of Religions in Italy). He is a member of the editorial board for the Interdisciplinary Journal of Research on Religion and of the executive board of University of California Press’ Nova Religio. From January 5 to December 31, 2011, he has served as the “Representative on combating racism, xenophobia and discrimination, with a special focus on discrimination against Christians and members of other religions” of the Organization for Security and Co-operation in Europe (OSCE). From 2012 to 2015 he served as chairperson of the Observatory of Religious Liberty, instituted by the Italian Ministry of Foreign Affairs in order to monitor problems of religious liberty on a worldwide scale.



