影響力のある『週刊新潮』は、共産党をなだめようとする「粗雑で稚拙な」試みの政治的理由を明らかにした。
マッシモ・イントロヴィーニュ
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『週刊新潮』は一般的に日本で最も影響力のある保守的な雑誌のひとつとみなされている。岸田首相が退陣表明をした中で、同誌が受賞歴のある調査報道ジャーナリスト、窪田順正氏による岸田外務大臣(当時)のセネガルにおける問題行動に関する記事を掲載したことは非常に意義深い。
『ビター・ウィンター』は、セネガルで現地の女性たちに大きな恩恵をもたらしている学校に対する日本当局の攻撃について、最初に警鐘を鳴らした国際メディアである。この学校は、国連の経済社会理事会(ECOSOC)で25年以上にわたって総合協議資格を維持してきたNGO、世界平和女性連合(WFWPI)が支援していた。WFWPIが1997年に得た「総合協議資格」は、何千ものNGOに与えられている「特殊協議資格」とは異なり、比較的珍しいものである。この資格は、ECOSOCの規則に従い、「広範な地理的範囲を持つ、かなり大規模で確立された国際NGO」で、「いくつかの分野」において国連の目的に「実質的かつ持続的な貢献」を提供しているNGOに対し、徹底した調査を経て与えられる。
WFWPIが1992年に、当時統一教会と呼ばれていた家庭連合の指導者、韓鶴子博士とその亡き夫である文鮮明師によって設立されたことは間違いない。このことは決して隠されているわけではなく、同団体のウェブサイトで明確に説明されている。一方、WFWPIの目的は家庭連合のための布教ではなく、慈善事業や教育活動を通じて国際的に女性を支援することにあり、WFWPIの活動に参加する人々は、宗教に属しているか、あるいは無宗教であるかを問わない。 『2023年4月、アフリカ・セネガルのブレーズ・ジャーニュ国際空港に、外務省国際協力局のある課長が降り立った。日本からおよそ33時間の長旅を経て課長が向かったのは、同国のダカール州ルフィスク県ティバワン・プル市にある、女性のための職業訓練校「JAMOO2」だった。』 記事の説明によれば、JAMOOとは現地のウォロフ語で「平和をもたらす」という意味で、「2」という数字はプロジェクトの2号校であることを示している。JAMOO2では、100人ほどの女性たちが洋裁、刺繍、レース編み、ビーズ飾りなどの技術を学んでいると「新潮」は説明している。
窪田氏によると、この学校は『6年ほど前に日本の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」というODA(政府開発援助)によって建設された』ものだという。『在セネガル日本国大使館のホームページにも、18年7月25日の引渡式の様子とともに、地元のNGO団体に対して日本政府から「7万4639ユーロ(955万3792円)」が供与されたという情報が掲載されている』
しかし、なぜ日本の外務省はセネガルに代表団を派遣したのだろうか?窪田氏が疑問を投げかけた。学校が良いサービスを提供しているかどうかを確認するためだったのか?そうではない。代表団は、学校とWFWPとのつながりの痕跡を「消す」ためにセネガルに行ったのだ。『新潮』が指摘するように、『引渡式の写真では校舎の入り口の横に横断幕が掲げられており、それを拡大すると「JAMOO」という学校名の横に、地球儀のような図に人が立っているデザインのロゴがある。これは校舎の外壁や看板、校舎内の至る所に掲げられ、生徒たちに支給される制服の胸元にもプリント、卒業証書にもデザインされていた。そんな「JAMOO2」のシンボルともいうべきロゴを一つ残らず抹消するよう、外務省課長は同校に命じたのである。それだけではない。あたかも「JAMOO2」を全く別の学校へと衣替えさせるかのように、電話番号、メールアドレス、さらにはセネガル政府に提出する登録情報まですべて変更するよう要求。さらに、ここで長年、生徒たちを指導していた教師の一人を「追放」するように要求したのだ。』
窪田氏が指摘したように、これは職権乱用である。日本のODAが援助したとはいえ、決してこれが学校の全費用を賄ったわけではなく、ましてやその大半を占めたわけでもない。残りの費用は、ほとんどが日本のWFWPと関係のある、民間の寄付者からのものだった。同校の校長でODAを申請したNGOの代表であるベロニク・ディオプ氏は、窪田氏にこう語った。「日本政府の人は高圧的な態度で、『野党と世論をなだめるため、とにかく“痕跡”をすべて消さなければいけない』と要求してきました。この学校を失ってしまうかもしれないと恐怖を感じた私は従うしかありませんでした」
窪田氏の言う日本外務省の「必死の隠蔽工作」を説明するために、記事は「2022年11月の衆議院外務委員会での出来事」に言及している。その会合で、『日本共産党の穀田恵二衆議院議員が「JAMOO2」について、女性連合が運営している施設であり、旧統一教会が布教活動などに利用しているのではないかと質問した』 この質問に対する答えは「ノー」であったが、共産党は明らかに、政府が家庭連合・統一教会と協力を続けているとほのめかすことで、政府を困惑させようとした。林芳正外務大臣(当時)も岸田首相も、共産党首に調査を約束。2023年3月17日、穀田議員は衆議院外務委員会で再度追及を行った。林外務大臣は『現地の大使館職員が「JAMOO2」に訪問して書類などすべてを確認したところ、ここは“独立したNGO団体”の学校であって、女性連合とは関係がない、と断言した』と窪田氏は報告している。
窪田氏によると、『この調査結果は「うそ」ではない。だが、「まやかし」だった。なぜなら、“独立したNGO団体”としてODAを申請するというスキームを持ちかけたのは、現地・セネガルの日本大使館の職員だったからである』実際、JAMOOプロジェクトは1995年にWFWPによって立ち上げられ、資金も提供された。窪田氏によれば、このプロジェクトは大成功を収め、セネガル政府からも国連からも賞賛されたという。実際、新しい校舎が必要なほどの成功を収めた。
窪田氏はこう続ける。『そんな時、かねて顔見知りだった在セネガル日本大使館職員から、ディオプ氏は日本のODAを使って新しい校舎を建設したらどうかと勧められる。国連やセネガル政府が評価する社会貢献ならば、日本の外務省としても申し分ないという。渡りに船ということで、さっそく申請をしようとしたディオプ氏だが、そこで大使館職員からこんな助言をされる。この申請は女性連合ではなく、ディオプ氏個人が市民団体を設立し、そこから申請をした方がいいのではないかというのだ』
窪田氏は、WFWPが統一教会と関係があったからこのような提案があったとは考えていない。日本大使館員とディオプ氏との会話は、安倍晋三元首相が暗殺された2022年よりかなり前の2015年に行われた。当時、『日本で旧統一教会は全くと言っていいほど批判されておらず、そのため(与党の)自民党議員たちも当たり前のように関連団体のイベントに出席していた』
実際、ディオプ氏は窪田氏にこう言った。『大使館職員によれば、日本のODAは女性連合のような国際組織よりも、現地の市民団体などへの方が供与しやすい傾向があるそうです。長くセネガルの女性を支援してきた私たちを評価して、素直に応援してくれただけです』このような理由から、ディオプ氏はODAを申請するために地元NGOを設立した。しかし、彼女はWFWPとのつながりを隠すことなく、むしろそれを“誇り”としていた。
窪田氏は、2つの「否定できない事実」があると指摘する。第1に、ODAはWFWPではなくセネガルのNGOに提供されたこと、第2に、そのNGOと、JAMOOプロジェクトに重要な寄付を提供し続けたWFWP日本支部との関係が隠されていなかったことである。これらのことは、複雑な調査をせずとも容易に発見できた。
では、なぜ日本の外務省がわざわざセネガルに人を送り込み、WFWPとJAMOOとの目に見える痕跡を消したのか。『この謎を解く鍵は、23年3月29日の衆院外務委員会にある』と窪田氏は答える。『先に触れた同年3月17日の政府回答に納得できない穀田議員は、外務省が「ずさんな調査」をしてお茶を濁すのは、このODAの承認をしたのが外務大臣時代の岸田首相だったからだと主張。「岸田さんに関わることについては黙っておこう」という忖度(そんたく)が働いて調査がねじ曲げられたのではないかというわけだ。
その翌日、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」も「ODA 統一協会関連団体への供与 岸田外相(当時)が関与」(23年3月30日付)と報じた』
そこで窪田氏は、日本共産党に威圧された外務省が、岸田首相を守るために“乱暴で稚拙なつじつま合わせ”を行ったと報告している。『突然、日本からやってきた外務省課長に「証拠隠滅」を指示されたディオプ氏は、そのショックと学校を失うかもしれないという恐怖から、しばらく体調を崩していたという。なんの非もないセネガル人をここまで追い詰めることが、日本の国際支援なのか』『岸田首相は退任するが、この政権が裏で何をしてきたのかという検証は始まったばかりだ』と新潮は結んでいる。